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平野美宇の妹・亜子(17)が歩む文武両道…見守る母が発達障害を「隠すことではない」と公にする理由《張本智和の妹と対戦》
text by
高樹ミナMina Takagi
photograph byNaoki Nishimura/AFLO SPORT
posted2022/02/02 11:01
コーチである母の話に耳を傾ける平野亜子(17歳)。全日本選手権のジュニア女子シングルスでベスト16入りを果たした
亜子は三姉妹の三女で、長女・美宇と次女・世和を姉に持つ。
昨春、大学生になった世和も高校まで卓球をやっていて、物心ついた頃から「平野美宇の妹」という視線を浴びてきた。
だが、2人とも有名人の美宇にコンプレックスはない。それは母・真理子の三人三様の子育てによるところが大きい。
とりわけ亜子には発達障害があるが、それは個性であり「隠すことではない」と公にしている。美宇も同じ考えで、時々テレビ番組にも出演する妹たちの姿を微笑ましく見守る。
障害の特性上、亜子は人とのコミニュケーションが得意ではない。全日本選手権の記者会見に登壇した際も受け答えに時間がかかり、言葉足らずなところもあったが、そこは試合のベンチコーチでもある真理子が付き添い、手助けした。
高校生の子の記者会見に親が同席するケースは他になく、わが子はそういう場は不得手だからと断ることもできるだろう。しかし、平野親子はそれをしない。なぜなら記者会見に応じるのも大会に出場する選手の務めであり、姉妹で応援してもらっていることへの感謝と考えるからだ。
メディア対応に関しては美宇も幼いうちから「負けた試合で記者さんの質問に答えたくないと思うなら、勝った試合でも答えるのをやめなさい」と母に言われてきた。自分にとって都合の良いことばかりしていては人として駄目だという戒めである。
卓球を通じて社会性を身につける
平野三姉妹は卓球を通じて社会性を身につけてきたといっていい。
とりわけ発達障害のある亜子は6歳で卓球を始めてから同世代の友達と日常的に交わり、卓球スクールにやってくる年長者ともかかわりながら自然とコミュニケーション能力を高めてきた。
彼女の障害のことを知らない人は、亜子のつっけんどんな態度や言葉にたじろぐかもしれない。だが、母・真理子の運営する「平野卓球スクール」には身体障害のメンバーもいて、皆、一緒に卓球を楽しんでいる。そうした環境の中でスクールの生徒たちはごく自然に障害に対する認知・理解を深めていくのだ。もちろん美宇も実家にいた小学6年生まで同じ環境で育った。
また真理子が元教員で、かつて特別支援学校に勤務した経験を持つことも大きい。障害のある子どもに関する見識が豊かで、そうした子を持つ親の気持ちがよくわかる。そのことが卓球スクールのインクルーシブな環境づくりに反映されている。