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《世界最高GK》「頼りになるのは本能だ」EUROで神セーブ連発のドンナルンマがプロ入り後のPK戦でいまだ不敗の理由

posted2021/12/22 06:00

 
《世界最高GK》「頼りになるのは本能だ」EUROで神セーブ連発のドンナルンマがプロ入り後のPK戦でいまだ不敗の理由<Number Web> photograph by L’Équipe

ヤシン・トロフィー受賞を、フィアンセのアレッシアと自宅で喜ぶドンナルンマ

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『フランス・フットボール』誌が世界最高のゴールキーパーに与える賞として2019年に創設したのがヤシン・トロフィーである。史上最高のGKとして名高く、ただひとりGKでのバロンドール受賞者であるレフ・ヤシン(ソビエト連邦)にちなんだこの賞の、栄誉ある最初の受賞者はアリソン(ブラジル、リバプール)であり、ふたり目の栄誉にあずかったのがジャンルイジ・ドンナルンマ(イタリア、パリ・サンジェルマン)であった。

 EURO2020でのドンナルンマの活躍は白眉だった。彼の力なくしては、イタリアは準決勝のスペイン戦もまた決勝のイングランド戦も、PK戦で勝てたかどうか……。優勝の立役者であったのは間違いない。また昨季所属したACミランでも、ここ最近低迷するクラブをリーグ2位に押し上げ、8季ぶりのUEFAチャンピオンズリーグ出場へと導いた。

 イタリアは歴史的に優れたGKを輩出している。戦前のジャンピエロ・コンビに始まり、ディノ・ゾフやエンリコ・アルベルトシ、ワルテル・ゼンガ、ジャンルイジ・ブッフォン……。ドンナルンマもその系列にはいる。だが、彼らがいずれも北部の出身であるのに対し、ドンナルンマは南のナポリ県南部、ポンペイに隣接するカステッランマーレ・ディ・スタービアの出身である。インタビューからはあまりうかがい知れないが、そこにはひとつの意味がある。

 ロベルト・ノタリアニ、トマ・シモン両記者によるドンナルンマインタビューを2回にわけてお届けする。まずは前編から。(全2回の1回目/#2に続く・肩書や年齢などは『フランス・フットボール』誌掲載当時のままです)

(田村修一)

若きGKが語るヤシン・トロフィへの道のり

 イタリア代表でのEURO2020優勝とヤシン・トロフィー受賞。ジャンルイジ・ドンナルンマが実り豊かな1年を振り返った。

 目を輝かせ誇らしげに満面の笑みを浮かべるその顔は、濃いあごひげに縁どられているものの若さを隠し切れない。そこからうかがえるのは、優しさと力強さが混じりあった内面の静けさである。ジャンルイジ・ドンナルンマは名誉を与えられたのではない。彼はそれを自力で獲得した。

 十分に暖房の効いた自宅の居間、暖炉の前のソファで寛ぐドンナルンマの傍らでは、愛犬のココがひとり戯れている。2021年は彼にとって大きな意味のある年となった。それが重要であるのは、彼がタイトルを獲得したからばかりではない。その活躍ぶりは、大会の枠を超えて際立っていた。

 親し気な微笑みをたたえながら、落ち着いた低い声でドンナルンマが語った。傍らではフィアンセのアレッシアが、親しみを込めた眼差しを彼に向けている。謙虚さと静謐さは、同時にドンナルンマの力の源泉でもあるのだった。

【次ページ】 ヤシン・トロフィーを獲得した瞬間

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ジャンルイジ・ドンナルンマ
パリ・サンジェルマン

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