プレミアリーグの時間BACK NUMBER
イングランド黄金世代が続々と現場復帰 ビラを率いるジェラードはリバプール“帰還”に向けて夢のようなスタート
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2021/11/29 17:00
アストンビラでプレミアでの監督業をスタートさせたジェラード。古巣のリバプールを指揮する日はいつ訪れるのか
一方、2020年に選手兼コーチとして加入したダービー(2部)で、今年1月から正監督を務めるルーニーはダグアウトでのファイティング・スピリットも旺盛な元“天才肌”だ。近年、プレミア昇格を意識して無理をしたクラブは経営破綻。黄金世代で最後にスパイクを脱いだルーニーは、ストレスだけが原因ではないにしても恰幅が良くなり髭も白くなるなど、30代半ばにして貫禄すら感じさせる風貌になっている。
昨季は最終節で残留に漕ぎ着けたが、リーグから21ポイント剥奪処分を受けた今季は降格が濃厚。それでも黄金世代きっての“ストリート・フットボーラー”だったルーニーのダービーは、最下位と首位の対決だった11月21日のホームゲームでスコット・パーカー率いるボーンマスを3-2で下す番狂わせを演じた。
ランパードは経験不足を露呈して解任
ダービーで2018年に監督としての第1歩を踏み出したランパードは、翌年にはプレミア正監督として黄金世代の先陣を切った。
自身が歴代得点王としてクラブ史に名を残すチェルシーがFIFAによる処分で夏の補強を禁じられ、冬にも即戦力を獲得しなかった2019-20シーズンのことだ。
メイソン・マウントに代表されるアカデミー卒業生に1軍の門戸を開きつつ、トップ4フィニッシュでCL出場権を維持するなど、就任1年目から実績を残した。しかし昨季は、300億円規模の補強費を投じたチームの戦力を十分には引き出せず、下積み1年という経験不足を露呈して解任された。
マン・マネージメントも不十分だった。今年1月から指揮を執るトーマス・トゥヘルの下では活躍するアントニオ・ルディガー、ジョルジーニョ、マルコス・アロンソなどは、ランパード体制2年目のチェルシーでは放出対象に過ぎなかったのだ。
ランパード、パーカーに続いて黄金世代3人目のプレミア監督となったジェラードは、より堅実に、監督としてのトップレベルへの歩みを進めている。代表では攻撃的MFとしての類似点からランパードとの共存が指摘され続けたが、監督としての“ゴール”の1つであるはずのリバプール帰還にはより慎重だ。
自らも育った古巣リバプールのユースで指導を始め、続いて2018年にはレンジャーズで監督業に挑戦。3年目の昨季にスコットランドの強豪を10年ぶり通算55回目のリーグ優勝に導くと、続くイングランドでの新任地も、クラブ買収で世界一リッチなクラブに化けたニューカッスルではなく、ユース出身の若手も登用しながらトップ6復活を目指す古豪のアストンビラを選んでいる。
ジェラードはプレミア初陣でブライトンを撃破
シーズン途中の“転職”には、リバプールへの“踏み台”という批判的な意見もあるが、監督としての成長をアピールするには同リーグで指揮を執るに越したことはない。極端な例だが、かつてのリバプール守護神で、代表黄金世代の監督第1号となったデイビッド・ジェームズは、2014年には選手兼任、2018年には専任でインドのクラブに招かれたという監督キャリアがある。