プレミアリーグの時間BACK NUMBER
イングランド黄金世代が続々と現場復帰 ビラを率いるジェラードはリバプール“帰還”に向けて夢のようなスタート
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2021/11/29 17:00
アストンビラでプレミアでの監督業をスタートさせたジェラード。古巣のリバプールを指揮する日はいつ訪れるのか
注目された“ジェラード監督”のプレミア初陣は、満員のビラ・パークでの零封勝利(2-0)となった。対戦相手のブライトンはクラブの規模と知名度では格下だが、今季は開幕からトップ10内を維持するなど絶好調。ジェラード新監督は開幕戦以来の4バックを採用して、リーグ戦6連敗を阻止した。
移籍2年目で主砲としての貢献が望まれるオリー・ワトキンスが先制ゴールを決めると、CBタイロン・ミングスがタッチを割りそうなボールをスライディングでつなぎ、その後のチャンスに自らのフィニッシュで追加点を奪った。
3年半契約を結んだクラブでの1試合目にすぎないが、ジェラードは16位で受け継いだチームで安全圏浮上を実現し、リバプール指揮官へのステップアップに向けて夢のようなスタートを切ったと言える。
「監督向き」のテリーは挑戦を焦らず
昨季までアストンビラの助監督だったテリーにも、将来的にチェルシー指揮官としての生え抜きレジェンド帰還が期待される。2018年に現役最終クラブとなったアストンビラでチームスタッフ入りしたテリーは、「キャプテン」が自身の代名詞だった現役時代から「監督向き」と言われてきた。
1軍レギュラーとして17年間を過ごしたチェルシーでは、情け無用の解任が当たり前のクラブで監督業の厳しさを目の当たりにしたが、同時にジョゼ・モウリーニョ、ルイス・フェリペ・スコラーリ、フース・ヒディンク、カルロ・アンチェロッティ、ラファエル・ベニテス、アントニオ・コンテといった錚々たる監督陣から、有益なノウハウを吸収することもできただろうから、今夏に決意した独り立ちの成り行きが楽しみだ。
幸い、「然るべき話が来れば、用意はできている」と語る本人に挑戦を焦る様子はない。ピッチ外での状況も考慮すべきであり、経営状態に目を瞑って痛手を被った反面教師には、2018年の監督初挑戦でマクルズフィールド(当時4部)をセミプロへの降格から救ったにもかかわらず、給与未払いでクラブと袂を分かつことになったソル・キャンベルもいる。
心の絆で結ばれているクラブやビッグクラブを選ぶタイミングの難しさは、かつての盟友ランパードが身をもって証明している。
いみじくも、ユナイテッドで指揮官の任を解かれたばかりのスールシャールは、「選手としてプレーしたクラブでの最後の夢が1軍の指揮だった」とコメントした。失敗すれば、決して2度目はない監督としてのレジェンド帰還。だからこそ、急がなくていい。
イングランド黄金世代の監督挑戦で、他を1歩リードしているジェラードのように。