プレミアリーグの時間BACK NUMBER
イングランド黄金世代が続々と現場復帰 ビラを率いるジェラードはリバプール“帰還”に向けて夢のようなスタート
posted2021/11/29 17:00
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph by
Getty Images
11月20日、スティーブン・ジェラードがアストンビラの監督としてプレミアリーグ・デビューを飾った。その2週間前まで指揮を執っていたディーン・スミス前監督は同日、ノリッチでの初陣に挑んだ。
こうした監督の“玉突き”は例年通りのことだが、スミスの後任としてジョン・テリーの名前があり、スミスと並ぶ新監督候補にフランク・ランパードも噂されたことを思うと、時の流れを感じる。
かつてのイングランド代表黄金世代が、監督として“現場”に戻ってきているのだ。
オーウェンは馬主としての“余生”を楽しむ
いまだにウェイン・ルーニーの怪我がなければ優勝できたとする国民が多いEURO2004での代表チームを例にとれば、メンバー23名のうち13名が補佐役や暫定指揮を含め監督と名のつく仕事を経験している。
オーレ・グンナー・スールシャール体制が終わったマンチェスター・ユナイテッドでは、2005年に代表戦初先発の機会を得たマイケル・キャリックが、暫定監督として指揮を執ることになった。
サッカーの現場に残り、選手以上のプレッシャーとストレスを伴う仕事を選ぶ面々には頭が下がる。刺激を求めずにはいられない者たちには「アドレナリン・ジャンキー」という表現もあるが、現役時代にトップレベルに到達した者が持つ高い競争意識と勝利意欲が、引退後も彼らを駆り立てるのだろう。
イングランド黄金世代は、悠々自適のミリオネア・ライフが可能であるのに……。
実際にマイケル・オーウェンなどは、現役当時から入れ込んでいた競馬の世界で、馬主と厩舎オーナーとしての“余生”を楽しんでいる。たまに顔を出すサッカー解説業界が、監督界より居心地の良い世界であることはガリー・ネビルも認めるところだ。
2015年にバレンシアでの監督挑戦がわずか4カ月で終わり、「1回で十分」と本音を吐露しているG・ネビルは、指揮官としてはチームの守備を改善できなかった。
名解説者が率いた当時のバレンシアはリーグ戦16試合のすべてで失点し、カップ戦ではバルセロナを相手に7失点の大失態まで演じている。
ルーニー率いるダービーは首位相手に番狂わせ
ポール・スコールズは、名選手は名監督になりにくいという定説を地で行った。
黄金世代の中盤でも最高と称えられた攻撃センスの持ち主は、左アウトサイドでの起用を嫌って29歳で代表引退を決めたが、監督としてもあっさり身を引いている。2019年に就任したオールダム(4部)は、少年時代からの心のクラブでもあったはずだが、1勝3分3敗の7試合のみで辞任に踏み切った。