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〈毎日王冠〉シュネルマイスターが歩む“マイル王への道”…手塚師、ルメールの覚悟「クラシックの権利まで捨てるわけですから」
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph bySankei Shinbun
posted2021/10/09 11:05
今年5月、NHKマイルを制したシュネルマイスターとクリストフ・ルメール
そんな陣営が次走として選んだのは皐月賞トライアルの弥生賞ディープインパクト記念(GII)だった。
「2戦目で器用さを感じたので、そういったスキルの求められる中山をもう1度使う事にしました。走りぶりから距離が延びるのはこなしてくれると思いました」
手塚師の覚悟「クラシックの権利まで捨てるわけですから…」
指揮官がそう言うように初めてとなる2000メートルにも2番手で折り合って粘り腰を披露。タイトルホルダーの逃げ切りこそ許したが、2歳時のチャンピオンホースであるダノンザキッドの追撃を抑えて2着を確保した。
こうして皐月賞(GI)の出走権を獲得したシュネルマイスターだが、手塚調教師はこのクラシックの権利を放棄。なんと矛先をNHKマイルCへ向けると、当時、その理由を次のように語った。
「オーナーと相談した結果、この馬の能力をより発揮出来る舞台となるとマイルかな、と……」
そして、次のように感じたと続けた。
「クラシックの権利を捨ててまでマイルに向かうわけですから、ここは何としても勝ち負けしないといけないと思いました」
NHKマイルC当日のシュネルマイスターは前走比プラスマイナス0キロの480キロ。「前走はトライアルという事で少し太かった」と語った弥生賞時と数字的には変わらなかったが、これには手綱を取ったルメール騎手が次のように語った。
「数字的には同じだったかもしれないけど、しまってきているという感じは受けました」
NHKマイルを制した「しぶとい競馬」
こうしてゲートが開くと「少し反応が鈍くて後ろからになりました」(ルメール騎手)。道中も鞍上の手が動く。直線に向いてからも早目に抜け出しを図ったソングラインとの差が開き、万事休すかと思えるシーンがあった。ルメール騎手は次のように述懐する。
「反応が遅くて差が開いた時は負けたと思いました。でもシュネルマイスターが高い能力の持ち主である事は感じていたので諦めずに最後まで一所懸命に追いました」
すると鞍下のパートナーがそれに応えた。ジリジリと伸びると最後の最後でソングラインを捉まえ、先頭でゴールに飛び込んだ。手塚調教師は言う。
「レース上がりが34秒7で自身の上がりは34秒0。極端に速い32秒とかの上がりにならなかったのが勝因の一つだと感じました」
これが先週の凱旋門賞(GI)でも披露されたドイツ血統のしぶとさなのだろうか。初めての古馬が相手となった安田記念(GI)こそ3着に敗れたが、ひと息入れてリスタートとなる今回、どんな競馬をしてくれるのか。同厩舎のマイネルファンロン共々期待したい。