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甲子園の“異変”…監督たちが悩む「打線に感覚のズレがある」 地方大会“65-0”&チーム打率5割の三重高はどう戦った?
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byKYODO
posted2021/08/21 17:03
20日に行われた三重ー樟南(2-0)。写真は2回オモテ三重高、7番宝田の先制右犠飛のシーン
プレイボールがかかると、三重は1回表、先頭の森涼太が2ボール1ストライクからの4球目を強振。左中間を破る三塁打を放った。持ち前の打棒を発揮する期待感が高まる一打だった。
この回は後続が倒れて無得点となったが、2回表には、先頭の原田俊輔が三塁線を破る二塁打で好機を作る。続く品川侑生の左翼前安打で一、三塁として7番の宝田裕椰の右翼犠牲フライで1点を先制した。4回には品川のチャンスメークから、2死二塁の好機を作ると、8番上山颯太の中前適時打で2点目をあげた。
ただ、得点はこの2点止まり。「あと1点を入れておきたかった」と三重・沖田展男監督はこの戦いの苦しさを振り返る。先発の上山が9回7安打無失点の好投で完封勝利を挙げて次に進むことができたが、打線が力を発揮できたとまではいえないだろう。先制ホームを踏んだ原田は「投手が近く感じた」と語っているくらいだから、3週間ぶりの試合はやはり打撃陣に感覚のズレを生んでいるようだ(※三重大会の決勝は7月26日だった)。
右打、左打、右打、左打…ジグザグ打線
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沖田監督はこの試合に挑むまでの調整段階で「2回ほど練習ができなかった」と明かした。その埋め合わせをするため、日帰りで三重の学校に戻って練習をしたそうだ。「それ以外では室内練習場を借りたりしましたが、どのチームとも変わらない調整の難しさだった」と苦しい胸の内を語っている。
相手が好投手のサウスポーである中で、この試合のキーになったのは右打者だった。沖田監督は左打者がある程度、苦労すると想定し、戦略をこう練った。
「西田投手に左バッターは難しいと思ったので、“ジグザグ”に打線を組むことによって、チャンスを作って行けたらなと思いました」
その言葉通り、1番打者から、右打、左打、右打、左打……とジグザグに打者を並べた。原田(右打)を5番に起用したのは左投手キラーであるからで、打線につながりを持たせるためのものだった。先制の場面は原田の出塁からの得点だった。
「よく投げてくれた」甲子園で“公式戦初完封”
また、この試合で大きかったのは先発・上山の好投だ。県大会では継投を基本スタイルとして勝ち進んできたが、完投させた。この選択も功を奏した。