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「コートの外では面白い人」八村塁が怒鳴られても“センパイ”と慕う理由…ラッセル・ウェストブルックが語るリーダー論 

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宮地陽子

宮地陽子Yoko Miyaji

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photograph byGetty Images

posted2021/04/27 17:01

「コートの外では面白い人」八村塁が怒鳴られても“センパイ”と慕う理由…ラッセル・ウェストブルックが語るリーダー論<Number Web> photograph by Getty Images

ウェストブルックを“センパイ”というニックネームで呼んでいるという八村。プレー以外の面でも大きな影響を受けている

 今は、自分がウィザーズの若手選手たちに対して、かつてのコリソンのような存在であろうとしている。

「リーダーシップはオフコートから始まる」というのが持論。コロナ禍では制限も多く難しいが、ふだんはチームメイトを食事に誘ったりして、まずは個々の選手との関係を築くようにしているという。

 そんなウェストブルックについて、八村は「昔、テレビで見ていたときにもダンスとかしていたんですけれど、オフコートではお茶目というか、面白い人です」と語っている。オフコートでもいい関係を築けているようだ。

 お互いにひとりの人間としてのつきあいができるようになれば、試合中に怒鳴っても、厳しい要求をしても、それが彼らのことを思い、チームのためを考えての言動だとわかってもらえる。自分の経験談を伝えたときにも、伝わりやすくなる。相手によって、伝え方を変えるなどのくふうもできる。

「いっしょに時間を過ごすことで、何が好きなのか、好きではないのか、どういうことは気にならず、どういうことは苦痛なのかといったことがわかるようになる。コート上だけでなく、オフコートで何か話すときにも、それが役にたつんだ」とウェストブルック。

「みんなから、色々と聞かれるような立場であることに感謝している。できるだけ、自分の知っていることを伝えるようにしている。自分が何でも知っているわけではないけれど、少し長くNBAにいて、シーズンのなかでのいいときや悪いときの波があることもわかっているので、そういったことを伝えるのも僕の仕事だ」

「戦術はあとからついてくる」

 そんなウェストブルックがチームメイトたちに求めることは、第一に自分らしさを忘れないこと。個性を押しつぶして、チームのためにやることを優先しても、本物の強さは生まれない。そのうえで、みんなが常に挑み、全力でプレーすることでチームとしてのアイデンティティが築かれる。

「若い選手たちはミスをすることもあるかもしれないが、そこから学んでいける。競い、全力でプレーすること。戦術のようなことはあとからついてくる。全力でプレーし、競うということがどういうことかを理解することが、一番大事なことだ」

 ウェストブルック自身、若手のときに細かなミスにもかかわらず、コート上で学ぶ機会を与えてもらったことによって成長できた経験がある。その環境を作ってくれたのが、現ウィザーズのヘッドコーチで、当時サンダーのヘッドコーチだったスコット・ブルックスだった。アグレッシブなプレーをする一方でミスも多かったウェストブルックを、ミスに目をつぶって起用し続け、まわりの批判の声に対しては盾となって守った。

「若いときにミスをすることを許してもらったことで成長できた」とウェストブルックは、感謝する。

【次ページ】 ミスを恐れていては、上を目指せない

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