ミスを恐れていては、上を目指せない。それはウェストブルックが八村ら、若手に伝えたいことでもあった。八村は言う。

「僕にとっていつでもアグレッシブにいくのが課題だったんですけれど、彼のプレースタイルを見ながら僕も学びましたし、彼もいつも僕に声をかけてくれて、アグレッシブに行け、行けと言われている」

　八村だけではない。ルーキーのデニ・アブディヤに対しても、シュートを打つべきときに躊躇すると、怒鳴って指導する。

ウェルトブルックが語る「レガシー」

　怒鳴られ、厳しく言われても若手選手たちがウェストブルックにリスペクトを払い、慕うのは、ウェストブルック自身が誰より努力をしていることを知っているからだ。

　練習がないオフの日でも欠かさず練習場に来てワークアウトをし、練習日には誰より早く練習場に行き、準備をする。そんな姿を八村やアブディヤら若手選手が間近で見ることは、彼らの今後の成長にとっても貴重な経験だ。

「リーダーとして大事なのは、毎試合、全力を出し切ること。それを見てもらうことで、言っていることもわかってもらえる。いつでも試合が終わったときには、コート上ですべてを出し切ったと言えるプレーを心がけている」とウェストブルックは語る。

　どんなチームに所属していても、いつでも目標は優勝に向けて最大限の努力をすること。

「チャンピオンは1チームだけ。残りのチームは全部同じように目標を達成できなかったということ。そういうメンタリティはいつでも変わらない」

　そう断言する一方で、優勝するかしないかによって、自分の人生の評価は左右されないとも語る。人生におけるレガシーは、出会った人たちにどれだけの影響を与えられるか。それが一番大事なことなのだと言う。

「自分が大事にしているレガシーは、人生の旅路のなかで、どれだけ多くの人をインスパイアすることができるかということ。恵まれないコミュニティで育ったから、そこでの苦労がわかる。社会のなかでアフリカ系アメリカ人であることがどういうことなのかもわかる。影響力があり、その能力がある人が立場をはっきりさせることが大事だ。僕にとって、それこそがレガシーだ。それは長期的なレガシーになる」