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IOCバッハ会長が東京五輪「無観客開催」に言及、日本の責任者の対応は? 試金石は3月4日の国際大会か
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byJIJI PRESS
posted2021/01/23 17:03
昨年11月、国立競技場を視察したバッハ会長
中止を考えない背景とは
数々あがっている懸念などとは乖離がある。大きな開きがそこにはある。
それもまた、懸念が大きくなる要因である。
そして浮かび上がるのは、なぜ中止や無観客での実施の可能性に触れることがないのか、検討されることがないのかという疑問だ。現地時間22日に、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長が無観客開催の可能性について言及したが、日本の責任者たちからは未だにそうした発言はない。
中止をいっさい考えない、無観客にはしない。その背景には、いくつもの事情があることは、外からもうかがえる。
ビジネスなど経済的な側面があるだろうし、政権運営をはじめ政治的な側面もあるだろう。開催することで(広い意味で)利益を得られる、プラスになる組織や人がいるわけだし、その立場にあって想像力が働かなければ、開催することでのマイナス面に目を向けることはないだろう。
こうと決めたら修正できない、したくない
もう一点、検討しない理由をあげることができるかもしれない。
組織委員会に携わる人が、こう口にしたのを聞いたことがある。
「いろいろなことを考え出したら、やる、やれる、と言えなくなってしまうじゃないですか」
開催の是非を検討するだけで進めなくなると言っているに等しい。開催するという大前提があり、それは覆すことができないものだと言っているかのようだった。
おそらくは開催するには厳しい状況になっているのは理解している。でも、いや、だからこそ、そこに目を向けたくない。前提が崩れるからだ。
こうと決めたら修正できない、したくない、だから開催以外の可能性を考えたり検討しない組織のありようが、伝わってくるようにも思える。
観客をどれだけ入れるか入れないかは検討する課題になっても、開催そのものは疑う余地のないものとしているようでもある。