令和の野球探訪BACK NUMBER
投手だけじゃない文武両道の新鋭校。
強打と「万全の準備」で広島の頂点へ。
text by
高木遊Yu Takagi
photograph byYu Takagi
posted2020/08/05 11:40
広島大会準々決勝、瀬戸内高校戦で存在感を発揮した武田高校・重松マーティン春哉。「プロ入り」を口にできるほど急成長中だ。
6秒8→6秒2、急成長の秘密は?
入学当時の50m走は6秒8と決して速くはなかったが、それが今や6秒2。巷では5秒台の俊足選手の名前が取り上げられることも珍しくないが、それはストップウォッチによる手動計測のものが多く、前述の入学時のタイムを含め武田高校では光電管で計測している精度の高いタイムに則したものだ。前述の第2打席でのベース1周は三塁で一度スライディングして止まったにもかかわらず16秒台だった。そのため普通に走っていれば14秒台の可能性もあり、これは高校生でもトップクラスだろう。
その急成長の要因となったのは、ボックスジャンプやペンタゴンバーを使った瞬発系メニューやランニングドリルだ。武田高校では経験豊富な高島誠トレーナー監修のもとでさまざまなトレーニングメニューや器具を用意しており、重松もその中で課題を武器と言えるまでにした。
また、自らの動きをフィードバックできるように、あらゆるメニューやプレーを録画している。重松は先輩であり、高校通算34本塁打を放った小野祥嗣(現・近大工学部)に打撃の助言を求めたという。「もっとボールを後ろで見たほうがいい」とのアドバイスをもとに、ボールを呼び込めるようになったことが打撃向上に繋がったようだ。
「時間が少ない分、(練習時は)今日は何をすべきかを決めてからグラウンドにいつも出ています」と重松が語るように、練習時間が短いからこそ「野球について考えること」は、どこよりも漠然とではなく鮮明にしており、時間も割いている。
平日はみっちり授業、雨天延期もあったが。
それはコンディショニングでも同じだ。常日頃から睡眠と各選手それぞれに合った体重管理と栄養補給を大切にし、サプリメントやプロテインも使って野球に則した体作りをしてきた。そして、イレギュラーな形となっている代替大会でもそれが大いに生かされている。
例年と違うのは大会上位に進んでも、緊急事態宣言下での休校期間があったことによる遅れから授業があることだ。岡嵜雄介監督は「月曜も50分×7時間の授業があります(笑)。拘束時間も長いし、クーラーで体を冷やさないようにもしないといけない」と難しさを語る。
また、広島大会準々決勝はすべて8月1日に、尾道市のしまなみ球場で行われたため、第4試合だった瀬戸内と武田の試合が始まったのは18時すぎ。さらに1回裏が始まる直前に雷鳴により中断。雨も降り出しノーゲームになり、翌2日の12時半からに順延となった。
それでも大勝を挙げたことで「選手たちが万全の準備をしているからこその結果です」と、普段から植え付けられている選手たちの高い意識に頼もしさを感じているようだ。