“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
J1札幌の大卒トリオの即戦力っぷり。
今季は“勝ち点3”と“未来“の融合を。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byJ.LEAGUE
posted2020/07/11 11:40
鹿島戦後、札幌の竹林強化部長と喜びを分かち合うMF高嶺。
スムーズだったチャレンジ&カバー。
交代当初、2シャドーの一角に入った金子は裏への飛び出しと献身的な守備で相手DFラインにプレッシャーをかけ続け、相手が一瞬でも相手の目が離れればスペースに飛び込んでいく。荒野とボランチのコンビを組んだ田中は、相手のポゼッションに対して荒野を中央に残して、精力的にボールに対して動いてプレスをかけた。逆に攻撃時は荒野を前に出す形で中盤の底に残り、鹿島・遠藤のケアをしつつ、カウンターで空いたスペースを埋め続けた。
金子は高嶺の投入以降は、慣れない1トップで頭をフル稼働。ジェイや鈴木とは異なるタイプだが、武器である駆け引きと豊富な運動量で相手のギャップを突き、常にボールを引き出した。
田中は高嶺と頻繁にピッチ上でコミュニケーションを図り、お互いの役割を確認した。ビルドアップ能力に秀でた高嶺がポジションを落として、後ろからのポゼッションに加わってDFラインやGKからのパスを引き出し、ドリブルとショートパスを中心にボールを落ち着かせる。田中はその動きに対して距離を詰めてサポートをしながらも、攻撃の際は高い位置に出る。荒野がアンカーの位置まで落ちてボールを受けるときは、高嶺と共に高い位置を取って、カウンターの中継地となった。
大卒トリオが入ってから、特に荒野を含めた中盤のチャレンジ&カバーはスムーズだった。全体のバランスを見ながら、スペースを埋めて連動したプレスを掛けつつ、サイドの菅大輝、ルーカス・フェルナンデス、駒井善成、金子の動き出しを常に視野に捉えていた。
追加点を呼び寄せた金子の動き出し。
象徴的なシーンを挙げると、74分のカウンターか。相手のセットプレーの崩れから、クリアボールを金子がヘッドで落とすと、荒野がすぐさま縦パスを入れる。菅がスピードを生かしてGKと1対1の場面を迎えると、ファーサイドには駒井、中央には金子が走り込んでいた。菅はシュートを選択し、これは惜しくも鹿島GKクォン・スンテの好守に阻まれた。
78分には、駒井からのボールをハーフスペースに走り込んできたルーカス・フェルナンデスが中継し、金子がラストパスを受けると左足ダイレクトシュート。これまたGKに阻まれたが、苦しい状況下で追加点の匂いが漂ってきた。
鹿島の猛攻に耐えながらも一瞬の隙を狙い続ける札幌は、後半アディショナルタイム3分。札幌の前線から仕掛ける激しいプレスで、鹿島の右サイドバック広瀬陸斗から駒井がボールを奪うと、そのままドリブルでアタッキングサードへ持ち込んだ。金子が素早くスルーパスを狙う動きをしたことで、鹿島DF3枚が完全に中央に引き寄せられ、そこに空いた右サイドのスペースにルーカス・フェルナンデスが走り込んだ。完全フリーとなったルーカス・フェルナンデスは、シュートブロックを狙うDF2枚をかわして、冷静に2点目を決めた。
鈴木のアクシデントがあったものの、そこからはペトロヴィッチ監督の狙いがピタリとハマり、2-0の完封勝利を手にした。