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佐藤勇人のサッカー人生の宝物。
「オシムさん、また叱ってください」
posted2020/06/06 11:45
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph by
Tamon Matsuzono
誌面に収まりきらなかったロングインタビュー、第2回である。
佐藤勇人の話はさらに続く。
オシム時代のベストゲームとコンセプト。ジェフの現状と未来、継承者としての決意、そしてオシムへの溢れる思い。心の声に耳を傾けよう。
――勇人さんにとってのオシム時代のジェフのベストゲームといえば?
「ジュビロ戦ですかね……2003年、最初のシーズンもそうですし、翌年何人かジェフの選手がジュビロに引き抜かれて、その後直接戦った試合も印象に残っています。
あとは、負けてはしまったのですが、国立でやった鹿島戦('05年)。退場で一人少なくなって2-4で負けたんですが、そのときのゴールがすごく印象的で。マリオ・ハースの2点目なんですけれども、GKからすべてダイレクトで6本のパスが繋がって、サッカーは人数が少なくとも、ボールが動いて人が動いてしっかりみんなが考えてやれていれば、こんなに簡単にシュートまで行けるんだと思いました。
少し前まで、日本はサッカーを複雑に考えすぎているのかなという思いがあったんです。バルセロナが出てきて、日本サッカーも少年団からトップまですべてバルセロナを目指せとなったとき、少し複雑に考えすぎているなと感じていて。それはオシムさんのサッカーを経験したからなのかもしれません」
――彼は縦のプロフォンダーとか長いボールも結構使うし、そういうのが悪いことだとは決して考えていないですよね。
「そうです。たとえば4対4でボールを動かす練習があるんですけど、最初の選手はワンタッチで出さなくてはいけないというルールのときに、だいたいみんな足元で受けに行くんです。そこからスタートするんですけど、オシムさんはすぐ止めて『何で裏があることを考えないんだ』と言った。『裏に走ってそこにワンタッチで出してもいいだろう』と。
サッカー観を大きく変えられました。日本人は固定観念にとらわれ過ぎている。こういう風にしなさいと言われたときに、安全第一の策をとってしまう。足元につけにいくのでなく、ゴールに迫ってリスクを冒すことを選択できなかったんだなあと。考え方が複雑になっているのは、サッカーもそうですし日本の教育も含めてなんでしょうけど、オシムさんは物事をよりシンプルに考えていると思いました」