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ノンスタ石田が語る漫才と競技化(2)
「ファンの存在が不利にもなりうる」
 

text by

中村計

中村計Kei Nakamura

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photograph byM-1グランプリ事務局

posted2020/01/21 18:05

ノンスタ石田が語る漫才と競技化(2)「ファンの存在が不利にもなりうる」<Number Web> photograph by M-1グランプリ事務局

2019年のM-1王者になったミルクボーイ。かまいたちの表情が、この勝負の重さを物語っている。

「うまいだけのコンビ」と言われて。

――なるほど、それであの自虐的というか、突っ込まれた後にさらに自分で自分を追い込むという漫才が生まれたんですね。あれも1つで2度、笑いを起こしてますもんね。

石田「そのあと、学祭で全部自分で自分に突っ込んで、井上に適当にアドリブで突っ込んでもらったんですけど、最初はぐちゃぐちゃになりましたね。流れが悪くなる。せっかく物語が進行しようとしているのに、僕はその邪魔ばかりしてるわけですから。車で言うたら、ノッキングしているような状態ですよね」

――ノッキング漫才。新しいですね。

石田「僕らは昔から、『漫才がうまいだけのコンビや』みたいな言われ方をしていたんです。おもろないヤツらや、みたいな。その僕らがわざと下手な方向に漫才を持っていくという発想がおもしろいと思ったんです。

 でもこのネタができるようになったら、めちゃめちゃうまいになる。そこまで行こう、と。ノッキング漫才をスムーズに進行させるためには、お客さんから自虐ツッコミを見えやすくしないとダメなんです。なので、僕が極端に自信のない性格の男であるという設定にして、自虐ツッコミにも必然性を持たせました」

島田紳助「いちばん衝撃的でしたね」

――直前になって、ようやく完成した新スタイル。予選での手応えはどうだったのでしょう。

石田「最初の方は温存し、準決勝で初めて新しいスタイルを披露しました。さっき話したようにお客さんにはそんなにウケてませんでしたけど、審査員や同業者をビビらすことはできたと思います。こんなネタあったんや、と」

――そこまで戦略的に戦っていたんですね。それが2008年決勝、1本目を終えたあとの島田紳助さんの「全出演者の中で、いちばん衝撃的でしたね」という激賞コメントにつながっている。

 でも2008年、優勝を争ったオードリーも一時キャラ漫才と言われ、自分たちはM-1では勝てないのかと思い悩んだようですが、ああやって貫けば結果が出ることもあるんじゃないですか。

石田「うーん、そこは難しいところですよね。人間がやってることなんで、正解はないですから。どんなにウケても、結果が出なかったらやっぱり迷子になりますし。もう何が正しいかわからなくなる。ただ、1つ言えるのは、『自分たちはM-1では勝てないコンビだから』みたいなことを言ってるコンビは勝てないでしょうね。オードリーは、本番では、そこは自分たちの中で消化していたと思います」

【次ページ】 「ウケる近道」は評価されにくい。

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