熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
今のなでしこ、ラピーノーどう思う?
ブラジルの伝説マルタが語り尽くす。
posted2019/12/29 09:00
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph by
Hiroaki Sawada
2019年6月から7月にかけてフランスでサッカー女子ワールドカップ(W杯)が開催され、アメリカ対オランダの決勝戦には女子W杯でも屈指となる約5万8000人の大観衆が詰めかけた。
アメリカが2大会連続4度目の優勝を飾ったが、アメリカ以外のベスト8はすべて欧州勢。2011年大会を制覇した日本、2007年大会で準優勝したブラジルは揃ってベスト16止まりだった。
大会MVPに選ばれたアメリカ代表のミーガン・ラピノーは同性愛者であることをカミングアウトしており、女子選手への待遇を男子と同等にすることを訴え、「トランプ大統領(アメリカ)は、LGBTや有色人種などのマイノリティを排除している。ホワイトハウスに招かれても行かない」などの発言でも注目を集めた。
過去、FIFA年間最優秀選手に6度選出されている史上最高の女子選手であるマルタは、スウェーデンとアメリカの強豪クラブでもプレーして欧米の女子フットボールを取り巻く状況にも詳しく、国連女性機関のアンバサダーとして女性の地位向上にも尽力するブラジル代表(セレソン)のエースである。
そんな彼女に世界の女子フットボールの将来、日本代表への忌憚のない意見、そして自身とブラジル女子代表について尋ねた。
欧州の台頭は、日本とブラジルが……。
今回のW杯では、アメリカはもちろんだけど、欧州勢がとても強かった。女子フットボールが盛んなフランスで開催されたこともあって、大会終盤はいつもスタンドがいっぱいだった(注:準決勝2試合でも平均5万人以上の観客を集めた)。
素晴らしいことだし、欧州以外の地域ではこれほど人気があったり世間一般の注目を集めるわけではないから、とても羨ましかった。
欧州各国がこれほど強くなり、また人気が高まっているのは、近年、男子で欧州各国の代表とクラブが優位に立っているのと同じ理由じゃないかしら。
欧州連盟、加盟各国の協会、各地のクラブに経済力とマンパワーがあり、欧州CLや各国リーグ戦が適切に運営され、マーケッティングも優れている。競技力が向上し、試合が面白いから観衆が増え、テレビ放映料やスポンサー収入が増え、それが選手にも還元されて才能ある選手がもっと集まる、という好循環なのだと思う。
欧州の国が台頭してきたもう1つの理由は、日本とブラジルの責任(笑)。
ブラジルは、2004年アテネ五輪で銀メダル、2007年W杯で準優勝、そして2008年北京五輪でも銀メダルを獲得したけれど、その後、少し停滞している。
国内リーグの運営も、欧州各国に比べるとかなり見劣りする。2013年にやっと全国リーグができて、州選手権も行なわれているけれど、観衆が少なく、活気が乏しいの。
国内では多くの収入を得られないので、有力選手の多くは欧米やアジアでプレーする。
それでも、最近はセレソンの試合ではかなりの観衆が集まるようになった。状況は、少しずつ好転している。