熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
今のなでしこ、ラピーノーどう思う?
ブラジルの伝説マルタが語り尽くす。
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byHiroaki Sawada
posted2019/12/29 09:00
女子サッカー界のレジェンド、マルタ。現状と日本サッカーへの印象を忌憚なく語ってくれた。
ラピーノーの主張は正しい。
どうして意外性のあるプレー、創造的なプレーができるのか? それも答えようがないわ。子供の頃、空き地で、好き勝手にプレーしていた。色々なアイディアを試して、それがうまくいくと大喜びしていた。
プロチームでは、監督が命じる戦術をよく理解し、それを実行しなければならない。でも、チームを勝たせるには個人能力が必要で、結果としてゴールにつながるのであれば、何をしてもいいと思うの。完全な自由。それがフットボールの素晴らしいところで、だからこそ子供の頃から現在まで、ずっとやってきたのだと思う。
ミーガン・ラピーノーの色々な発言について?
基本的には、彼女が言っていることは正しいと思う。私も、女性の地位向上のための活動をしている。
ブラジルなり南米の女性が置かれている状況は、アメリカよりずっと厳しい。女性の大統領や大都市の首長も出たけど、男女平等とはほど遠いかな。
私は、これからもプロ選手としてプレーするかたわら、ブラジル、南米、世界各国における女性の地位向上を手助けしたい。ただ、ラピーノーのような政治的な発言はしないと思うけど(笑)。
来年の東京五輪? もちろん、出場したい。今、33歳だけど、まだトップレベルでプレーできると思っている。ブラジル代表にも優秀な若手が出てきているから、今度こそ金メダルを取りたい。
私にとって最後の五輪になるかもしれないから、しっかり準備をして、最高の状態で臨むつもり!
黙々と戦い女王となったマルタ。
「フットボール王国」ブラジルの国王がペレなら、女王はマルタだ。
ただし、この女王は、プリンセスとして生まれてきたわけではない。極めて厳しい状況に置かれながら、決して絶望することなく黙々と闘い続け、人生を切り開いてきた。
彼女のこれまでの人生が、世界中のすべての女性を、そしてすべての人を勇気づける。
来年の東京五輪で、マルタの闘う姿を、その華麗なプレーを、日本のファンにもしかと見届けていただきたい。