熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
今のなでしこ、ラピーノーどう思う?
ブラジルの伝説マルタが語り尽くす。
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byHiroaki Sawada
posted2019/12/29 09:00
女子サッカー界のレジェンド、マルタ。現状と日本サッカーへの印象を忌憚なく語ってくれた。
サワ、ミヤマたちが入れ替わって。
日本は、偉大なサワ(澤穂希)、ミヤマ(宮間あや)たちがいた2011年W杯は素晴らしかったし、2012年ロンドン五輪、2015年W杯も頑張ったけれど(注:いずれも準優勝)、ブラジルと同様、選手が入れ替わって過渡期にあるようね。
でも、国内リーグ(なでしこリーグ)はブラジルよりうまく運営されていると聞いたわ。
日本選手は小柄だけど基本技術がしっかりしていて、チームの戦術を良く理解して忠実に実行する。練習量も多いとのこと。
ただ、これはブラジルもそうだけど、アメリカだけでなく今や欧州勢も真剣に女子の強化に取り組み始めたから、これから世界大会で上位に食い込むのはますます困難になる。戦術にしろ技術にしろ、欧米の選手がやらないことを実践しないと、彼女たちに勝つのは大変と思う。
日本は、来年の東京五輪に続いて、2023年女子W杯を招致しようとしているの? それは素晴らしいこと。W杯開催が実現したらさらに強化が進むだろうから、日本もまた強くなるわね。私たちも負けないようにしないと。
私を救ってくれたフットボール。
日本では、ブラジルや南米のように女性がフットボールをすることに周囲からの拒絶反応がないようだから、その点は恵まれている。
私はブラジル北東部の小さな町で生まれた。父親が1歳のときに家を出て行って、一家は困窮した。母は清掃員などをして4人の子供を育ててくれたけど、私たちも小さい頃から働いて家計を助けた。
そんな厳しい暮らしの中で、私を救ってくれたのがフットボール。
6歳のときに空き地でいとことボールを蹴って、その楽しさに夢中になった。でも、周りは男の子ばかり。「フットボールをするなんて女じゃない」とよく言われた。
しかも、自分は気にしなくても、親や兄弟に「みっともないからやめさせろ」などと言う人が大勢いたの。だから、親に隠れて、こっそりボールを蹴っていた。
女子チームなんてなかったから、男子チームに入れてもらって大会に出たら、別のチームの監督から「女子はプレーできないルールだ」と言われて締め出されたり……。つらい思い出は山ほどある。