マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
球数制限で投手が足りないって本当?
野球の指導者たちに聞いてほしい話。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byAFLO
posted2019/12/24 07:00
ワールドシリーズ優勝投手になった上原浩治が本格的にピッチングを始めたのは高校3年生だった。
バドミントン出身の大学生が150キロ?
笑いながらバッグの中を探って、これ読んだ? とスポーツ新聞の記事をテーブルの上に置いた。
新聞は、高校でバドミントン部だった大学生が、BCリーグのトライアウトで「150キロ」をマークしたと伝えている。
気になった記述があるという。
「野球は動きを固める練習が多いと思います」
文章にマーカーが引かれていた。
「ドキッとした。思い当たることがいくつもあったからね。こう投げろ! こう捕れ! こうスイングしろ! 野球の指導の現場は、形から入ってしかもそれ以外の方法は許さない……みたいな雰囲気を作るだろ。
ガチな野球からちょっと距離を置きながら野球やってる、そういう立ち位置の人が言うから、余計ドキッとしたねぇ」
おそらくその150キロの青年は、バドミントンの動きのメカニズムの中に、野球にとっても有用な要素を見いだしたはずだ。
向こう側から物事を見る大切さ。
「腕の前振りあたりなんでしょうね」
インターネットで調べたプロ野球投手のメカニズムも加味していると、その記事は伝えていた。
「向こう側から物事を見るって、意外とアレッてことに気づくことがあるからな……」
「逆の視点ってことですね?」
「いや、逆じゃない。裏だよ」
「裏……? 同じことじゃないですか?」
「違う。同じように見えて、間違いなく違う」