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<WBSCプレミア12プレビュー>
稲葉篤紀「金メダルへの第一歩」 

text by

石田雄太

石田雄太Yuta Ishida

PROFILE

photograph byShigeyoshi Ohi

posted2019/10/31 11:15

<WBSCプレミア12プレビュー>稲葉篤紀「金メダルへの第一歩」<Number Web> photograph by Shigeyoshi Ohi

複数リーダー制のほうがまとまったときは力を発揮する。

――では3つ目の経験について、プレミア12でキャプテンは誰に託しますか。

稲葉 キャプテンは置きません。

――えっ、置かない?

稲葉 今回、野手では松田宣浩(ソフトバンク)、秋山翔吾(西武)、坂本勇人(巨人)、菊池涼介(広島)の4人がいて、投手陣ではベテランの岸孝之(楽天)、2年前のWBCで活躍した千賀滉大(ソフトバンク)もいます。僕は彼らに「先頭に立ってやってほしい」と話をしようと思っています。

――キャプテンを置かないほうがいいと考えたのは、どういう理由からですか。

稲葉 かつての宮本慎也さんのような、キャプテンシーを持った選手がいればチームをまとめることができるんですが、今の選手たちを見ていると、いい関係にある何人かが上に立ってリーダーとして頑張ってくれたほうがチームはうまく回るような気がします。去年の日米野球でも、秋山と菊池がリーダーとして話し合いながらチームをまとめてくれましたからね。2009年のWBCではイチロー、岩村明憲、城島健司、福留孝介、松坂大輔といったメジャーリーガーが何人もいてチームをまとめ上げました。2013年のWBCも、阿部慎之助が強い気持ちを持ってリーダー役を引き受けて、彼を僕も含めた何人かでサポートしました。チームをまとめる人数は、多ければ多いほど、チームが一つになったときにすごい力を生み出すと思います。

――なるほど……となると、今回のプレミア12でまとまりを得た侍ジャパンは、そのまま来年の東京オリンピックのメンバーになると考えていいのでしょうか。

稲葉 もちろん、オリンピックの土台となる28人にしてあります。当然、来年のコンディションや調子も含めて流動的な部分はありますが、東京オリンピックはこのチームを土台にするつもりです。

――国際試合を戦う侍ジャパンは、長い期間をかけて熟成させるべきか、そのときに調子のいい選手を集めて戦うべきか、そこはどちらだとお考えですか。

稲葉 どうでしょう……どっちも、という言い方が正しいのかな。今回のプレミア12に選ばれていて、来年のオリンピックにも、調子のいい悪いにかかわらず、いてくれないと困る選手は必ず出てきます。だからこのプレミア12でも、勝ちにいく中で、その見極めもやっていく必要はあると考えています。

――北京オリンピックでは登録メンバーは24人でした。来年の東京オリンピックも同じ24人になるとしたら、今回のメンバーから4人は外れることになります。他に、本来はいてもらわなければならない選手もいます。そういう中で、どういう選手を東京オリンピックの核にしていこうとイメージしていますか。

稲葉 今、誰々と名前を挙げることは難しいですが、僕は侍ジャパンへの思いというものは選手によって違って当然だと思っています。プロ野球選手ですから、自分が活躍して、所属チームを優勝させなければならない。そういう中で、どうしても侍ジャパンに入りたいと思ってくれる選手が誰なのか。そこはこの1年間、いろいろな所を視察して回って、直接話したり、伝え聞いたりして、だいたい把握しているつもりです。僕は、そういう思いを共有したチームで戦いたいのです。いい選手を集めるのではなく、いいチームにしたい。これが僕の一番、大切にしているところです。

――限られたメンバーの中でどういう戦略を持ってチーム作りをするのか。その中で、普段と違うポジションを任せることへの是非についてはずっと言われ続けています。チームでは先発しかしていないピッチャーにリリーフでスタンバイさせる、打力優先のオーダーを組むために普段とは違うポジションを守らせる……たとえば今回のプレミア12のチームには、普段ファーストを守っている選手がいません。その点についてはいかがですか。

稲葉 もともと最近の野球では、ポジションが固定されている選手は意外に少ないということも言えると思います。12球団を見回しても、複数のポジションを守る選手が増えてきた印象を持っていました。プレミア12ではベンチに28人を入れられますが、オリンピックでは24人になる可能性が高い。となると、複数のポジションを守れるということはもっと大事になってきます。今回、ファーストは浅村にやってもらおうと思っていますし、山田哲人(ヤクルト)にも侍ジャパンではファーストの経験があります。彼らには、練習の中ではできるだけファーストのノックを受けてもらうよう、話してあります。

――東京オリンピックでも慣れないポジションを守ることがあるのでしょうか。

稲葉 そこは、自分のチームで守っているところをしっかり守ってもらいたいということが大前提です。北京オリンピックのとき、いつもはライトを守っていたG. G.佐藤がレフトを守ってミスをしてしまいました。僕も経験があるからわかりますが、ライトとレフトは同じ外野でも景色がまったく違います。選手にはなるべく不安のない状況でプレーしてもらいたいと思いますし、本当なら慣れたポジションで使ってあげたい。だから、オリンピックまでにファーストの専門家、出てこい、という気持ちは、もちろんあります。

【次ページ】 初戦の入り方が重要。自分たちの流れにいかに引き寄せるかが勝負。

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