野球善哉BACK NUMBER
進学校が甲子園で見せた分業制。
米子東の席巻が、もう待ち遠しい。
posted2019/08/08 15:00
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
Kyodo News
夏の甲子園1回戦。米子東の捕手・長尾駿弥は、先発した森下祐樹が1球を投げ終わる度に自軍ベンチを覗き込んでいた。
「アメリカではそうしているチームがあるとは知りませんでしたけど、いや、まぁ、分業するという意味ですね」
1981年生まれの若い指揮官、米子東の紙本庸由監督に「捕手のサインは監督が決めているでしょ」という質問を振ると、少しごまかしながらそう答えたのだった。
春夏連続の出場を果たした米子東の戦いぶりには、これからのトレンドになりそうな新潮流がふんだんに詰まっていた。
捕手の負担を減らす分業制。
その1つが捕手のサインを指揮官が決めるというものだ。これはメジャーリーグのいくつかの球団も採用している戦術だ。日本でもDeNAのラミレス監督が一時期、取り入れようとしたこともあった。
その当時、ラミレス監督はこんなことを言っていた。
「捕手の負担を減らすという意味でそうしている」
日本は捕手に求める要素が多すぎる。投手のワンバウンドになる変化球をしっかり止めることやボール気味のゾーンをストライクに見せるフレーミング技術などキャッチングに関するもの。さらには盗塁を刺す二塁へのスローイング、そしてインサイドワーク。また、「打てる捕手」が必要とされる時代だ。
それではあまりにも捕手への負担が大きいからと、アメリカなどではそうした分業制が行われているのだ。紙本監督はその事実を知らなかったとはいえ、面白い試みをしているといえるだろう。