野ボール横丁BACK NUMBER
明徳・馬淵節が甲子園に帰ってきた。
「パンツびっちゃんこやったわ」
posted2019/08/08 16:30
text by
中村計Kei Nakamura
photograph by
Kyodo News
「野球はわからんのですよ。うまいことやったら」
初戦を6-4で逃げ切った明徳義塾の監督、馬淵史郎は試合後、ベテラン講釈師のような味わい深い語り口で、そう言った。
高知大会の4試合は、初戦こそコールド勝ちしたものの、その後は接戦が続いた。
「楽勝の試合がなかったぶん、今日のようなしびれる試合展開でも、落ち着いてプレーできたんやと思います」
地方大会におけるチーム打率.304は、全出場校のうち下から4番目。チーム本塁打は0本だった。絶対的エースも不在で、4人の投手でやりくりする。
「今年の明徳は打てませんのでね。バントで送ったり、継投したり、普通の高校野球のチームだからね」
「エンドラン、なんとかかけてやろう」
馬淵は過去、夏の初戦15連勝をマークしたことがあるほど、初戦に強い。その根拠は、はっきりしていた。
「相手を研究する時間があるからよ」
今年も抽選で相手が藤蔭(大分)に決まってからというもの、映像を繰り返し観て、戦い方をイメージしていた。
「ヒットエンドランは、なんとかかけてやろうと思ってたんですよ。向こうがけっこう仕掛けてくるので」
相手の十八番を奪い、機先を制する腹積もりだったのだという。4回、6回と1アウト一塁からそれぞれヒットエンドランを成功させ、得点イニングをつくった。
また、藤蔭は6回から、そこまで2失点に抑えていた小宮大明に代え、左腕の高田大樹をマウンドに送り込んだのだが、馬淵は「ラッキーやと思った」と振り返る。
「スライダーの抜け球が多いんですよ」