プロ野球亭日乗BACK NUMBER
佐々木朗希の登板回避が示すこと。
球数制限と日程変更は絶対に必要。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byAsami Enomoto
posted2019/07/26 16:30
準決勝では完封勝利を挙げた佐々木朗希。その翌日が決勝でなければ……。
「194球」には葛藤があったはず。
この試合の佐々木は8回に160kmを計測してスタンドを一斉にどよめかせたが、この回が終わった時点ですでに球数は118球と危険水域に入っていた。
そうして同点に追いつかれた9回に35球を費やして球数は跳ね上がり、多めに見積もってもここがギリギリの限界点だった。それでも続投させた結果が194という球数だったのである。
国保監督の中でも葛藤があったはずだ。
いくら力感なく投げられるようになっていても194球という数字は、あまりに危険である。幸い、表立ったケガには繋がらなかったが、これだけ投げさせたことは国保監督自身が貫いてきた「故障を防ぐため」という観点からは完全にアウトなのは明白だった。
さすがに連投をさせずに翌日の登板は回避。中2日で準決勝に先発完投すると、決勝戦では、もうマウンドに送り出さなかった。
重い決断だったと思うが、甲子園に出場することよりも、佐々木という1人の投手の将来を優先した決断である。しかも準々決勝で好投した大和田健人、和田吟太両投手でもなく柴田貴広投手を先発させたところにも、国保監督の高校野球へのアプローチの仕方が見えている。
問題は高校野球の環境と日程にある。
佐々木という最高の素材を傷つけず、負けるかもしれないが他の選手にも活躍の場を提供し、チームとして戦う。勝つことだけ、甲子園大会に出場することだけが決して価値ではない。佐々木に194球投げさせたこととは別に、そういうアプローチを実践したことは、きちっと評価されて然るべきだろう。
だからこそ大船渡の戦い方が投げかけた問題を、我々はきちっと見つめて考えなければならないのである。
問題は佐々木が194球投げてしまう高校野球の環境、決勝戦でエースを投げさせない苦しい決断を求められる日程である。