ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
EU離脱、南北統一の狭間で……。
マキロイが68年ぶり母国での“全英”。
posted2019/07/17 07:00
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph by
Getty Images
今日まで続く最古のゴルフトーナメントである全英オープンが始まったのは、実に159年も前のこと。日本は260年以上続いた江戸の世の終わり。その1860年の3月には、かの大老・井伊直弼が桜田門外の変で暗殺されたというから、話は歴史と想像の向こうに及ぶ。
全英の舞台、いわゆるイギリス(英国)をつくる4つの国での過去147大会の開催実績は、イングランドで50回。スコットランドは96回でそれをしのぐ。ウェールズでの実績はいまだゼロ。
そして今年、1951年以来68年ぶりに大会をホストするのが北アイルランドである。
聖地より緯度が低いロイヤルポートラッシュGC。
イングランドなど3国があるグレートブリテン島と海を隔てたアイルランド島は、宗教・民族問題を発端に20世紀初頭、土地を南北に分ける国境を設けた。以降、当地はThe Troubles――いわゆる、紛争が長く注目されるエリアにもなった。緊張状態が続き、橋のあちら側とこちら側で銃を突きつけ合ったというのも、そう昔のことではない。
基本的には同じEU圏であるため二国間は自由に行き来ができる。事実、南のアイルランド共和国の首都ダブリンから、北アイルランドの首都ベルファストまでは車で2時間弱といったところ。
それでも、レンタカーの手続きの際には国境越えの追加料金を取られたり、一本の有料道路を走っていても、途中から速度制限の標識がキロ(アイルランド)からマイル(北アイルランド)に変わったり。通貨がユーロとポンドで違うため、店先で焦って財布の中をあさったりしていると、やはり国が異なることを実感できる。
半世紀以上の時を経て、再び全英をホストすることになったロイヤルポートラッシュGCは、この島の北の海岸線にある。“北アイルランドの北側”という響きから、勝手に極寒のイメージを突き付けられたが、緯度でいうとスコットランドのグラスゴーやエジンバラの方が高い。同じ全英リンクスの聖地・セントアンドリュースや昨年大会のカーヌスティのほうが北に位置するのである。