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内田篤人が“還元する闘将”に変貌。
プレーだけでなくスタジアム改善も。
text by
了戒美子Yoshiko Ryokai
photograph byGetty Images
posted2019/04/08 10:30
ピッチに立ってキャプテンマークを巻き、チームメートを鼓舞する。内田篤人がキャプテンらしくなってきた。
欧州での経験を鹿島に還元する。
鹿島の鈴木満強化部長は内田の復帰について、戦力としてチームの力になることを前提にした上で、欧州トップレベルでの経験をクラブに還元することも求めた。かつての小笠原満男や中田浩二と同じ役割だ。
だが内田には、2人を上回る実績と、長い時間を欧州で暮らしたという経験がある。還元できるものを測ることはナンセンスかもしれないが、その質は鹿島というクラブにとって大きな財産となるはずだ。
昨年12月、UAEで行われたクラブW杯終盤、鈴木強化部長と内田は面談の機会を持った。鹿島に復帰しての1シーズン目を終えて、内田が何を感じているかのヒアリングを行ったのだ。
ヨーロッパと比べて日本、鹿島はどうか、今あらためてどう感じているのかを聞くなかで、「さまざまなアドバイスというか、意見をくれました」と鈴木は話している。
還元と、選手としての情熱の両立。
内田はその面談の一端をこう明かす。
「満さんに聞かれた時、スタジアムの動線なんかの話をしたんだよね。ドイツだと試合後必ず、VIPラウンジを通らないと帰れないようになってたりする。そこで地元のスポンサーと話をしたりする。そういうの、大事なんじゃないかなって」
クラブにもよるが、欧州のサッカースタジアムのVIPラウンジは思っているよりもカジュアルで、席数も多い。少し高い金額を払えば、年間パスを持っていなくても購入できることもある。金額に見合ったサービスが提供され、そのひとつが選手との接点である。
地元とのつながり、愛されるクラブというのはそういう小さな積み重ねで成り立っていることを、内田は肌で感じていた。だからこそ、帰国して1年のタイミングで強化部長に話したわけだ。
拙著『内田篤人悲痛と希望の3144日』の取材でこの話を聞いた時は、鈴木に尋ねられたから答えただけかと思っていた。しかし今季の内田のあり方を見ると、“還元”が今の彼のテーマであるように思える。
そして、もちろんそれだけではない。
以前にもまして、いち選手としての闘志は熱い。自身が好調だと感じているのにスタメンから外されたときなど、こちらが「まあ落ち着いて」と言ってしまうような激しさで悔しがることもあるのだ。
まだまだ内田はフレッシュで面白い。それが今のところの結論である。