酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
打率4割よりも安打数に夢を見せた、
イチローの神髄と「野球の原点」。
posted2019/03/27 08:00
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Naoya Sanuki
多くの野球ファンと同様、私がイチローに刮目したのは1994年のシーズンからだ。
帰りの電車を気にしながらグリーンスタジアム神戸(現ほっともっとフィールド神戸)の右翼席から見た、定規で線を引いたような三塁への送球(レーザービームという言葉はまだなかった)は、今も目の底に焼き付いている。こんな選手は見たことがなかった。
そして幸いにも、東京ドームのイチロー引退試合も見ることができた。イチローには感謝の言葉しかない。
そんな彼はどんな選手だったのか。今回はMLB打者としてのイチローを、記録の面から振り返りたい。
21世紀のMLBにおいて最多安打。
現時点で、イチローは「21世紀のMLBで最も多くの安打を打った男」だ。
<2001年以降の通算安打数10傑 ※は現役>
1.イチロー 3089安打
2.アルバート・プホルズ 3082安打※
3.エイドリアン・ベルトレ 2828安打
4.ミゲル・カブレラ 2676安打※
5.ロビンソン・カノ 2470安打※
6.デレク・ジーター 2457安打
7.ジミー・ロリンズ 2438安打
8.カルロス・ベルトラン 2423安打
9.マイケル・ヤング 2375安打
10.デビッド・オルティーズ 2262安打
イチローは21世紀の最初の年である2001年にメジャーデビューした。だからキャリアの数字はすべて21世紀のものだ。2位のプホルズも同じ2001年のデビュー。2人はこの年、ア・ナ両リーグでそろって新人王を獲得した。
プホルズは大谷翔平のチームメイト。エンゼルスで現役だ。イチローとの差は7本。故障していなければ4月中にはイチローの記録を抜くはずだ。「今世紀最多安打」の称号は、まもなくイチローの手を離れる。そのこともあって、最初に紹介したかった次第である。