酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
打率4割よりも安打数に夢を見せた、
イチローの神髄と「野球の原点」。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byNaoya Sanuki
posted2019/03/27 08:00
最後の最後までヒットを追い求めたイチロー。その記録は大リーグで永遠に残り続ける。
四球を選ばず、安打を狙う。
先ほどの打率10傑のIsoDとH/Gも出してみる。
ミゲル・カブレラ 打率.3164 IsoD.078 H/G1.18
ホセ・アルトゥーベ 打率.3163 IsoD.048 H/G1.27
ウラジミール・ゲレーロ 打率.3158 IsoD.063 H/G1.20
マグリオ・オルドニェス 打率.3118 IsoD.063 H/G1.17
マニー・ラミレス 打率.3116 IsoD.102 H/G1.11
トッド・ヘルトン 打率.3114 IsoD.103 H/G1.11
イチロー 打率.3109 IsoD.044 H/G1.16
ジョーイ・ボット 打率.3108 IsoD.116 H/G1.10
ジョー・マウアー 打率.306 IsoD.081 H/G1.14
バスター・ポージー 打率.3059 IsoD.069 H/G1.11
イチローのIsoDは、10傑の中では極端に低い.044。四球を選ぶよりも、安打を狙ったのだ。まさに「安打製造機」である。
アルトゥーベも同じタイプ。
同じタイプの打者にはアルトゥーベがいる。イチローもアルトゥーべも長距離打者ではないため投手の警戒度は低い。それもあって、積極的に安打を稼ぐ打法に徹したのだ。
アベレージヒッターは、「ストライクゾーンの球だけを安打にし、ボール球に手を出さない」ことで打率、出塁率を上げていく。
これに対し、安打製造機は「バットが届く範囲、安打にできる範囲は、すべて打っていく」ことで安打数を稼ぐ。
荒っぽい打者がそれをすれば低打率にあえぐことになるが、イチローは「Wizard(魔法使い)」と呼ばれる驚異的なバットさばきで安打を量産し、かつその副産物として打率3割もマークしたのだ。
このあたりが打者イチローの神髄だと思う。