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打率4割よりも安打数に夢を見せた、
イチローの神髄と「野球の原点」。 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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photograph byNaoya Sanuki

posted2019/03/27 08:00

打率4割よりも安打数に夢を見せた、イチローの神髄と「野球の原点」。<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

最後の最後までヒットを追い求めたイチロー。その記録は大リーグで永遠に残り続ける。

イチローらしい、ある記録。

 イチローの「アンタッチャブル」といえば2004年のシーズン262安打ということになるだろうが、いかにもイチローらしいもう1つの「アンタッチャブル」を紹介しておこう。

<21世紀以降の単打数10傑>

1.イチロー 2514
2.デレク・ジーター 1853
3.アルバート・プホルズ 1794※
4.エイドリアン・ベルトレ 1792
5.ホアン・ピエール 1790
6.マイケル・ヤング 1689
7.ミゲル・カブレラ 1638※
8.ロビンソン・カノ 1592※
9.ジミー・ロリンズ 1583
10.ニック・マーケイキス 1564※

 単打、シングルヒットではイチローは2位のジーターに661本もの大差をつけての1位だ。今世紀中にこの記録に迫る打者が出るだろうか。

 イチローの単打のうち706本は内野安打。これは単打数2位のジーター(499本)よりも207本も多い。驚くべきことにイチローは内野二塁打も7本打っている。

「野球の原点」に一番近かった。

 イチローが華々しいデビューをした当時、彼は「野球の原点、スモールボーラー」としてもてはやされた。

 しかしセイバーメトリクスの進展とともに、この素朴な価値観は覆される。今や優秀な打者とは「四球と本塁打が多い」打者のことだ。打率も安打数も等閑視される。

 今、MLBで最も価値が高い打者の1人、マイク・トラウトは、2016年に主要タイトルを1つもとることなくMVPに選ばれた。このときのトラウトのIsoDは、.126に達している。

 率直に言って、イチローの打撃スタイルは、今のMLBのトレンドから外れている。

 しかしそれでも、彼が日米のファンをかくも沸かせたのは、以下に示すタイ・カッブが唱える「野球の原点」に一番近かったからだろう。

「50cm先に転がしたヒットと、50m先に飛ばしたヒット。この両方が同じヒット1本として扱われることは、野球のルールの最も素晴らしい部分である」

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