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菊池雄星の渡米とS・ボラスの思惑。
解体中のマリナーズが最有力候補。
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byKyodo News
posted2018/12/22 11:00
メジャー移籍を目指し、アメリカに渡米した菊池雄星。果たして新天地はどこに?
「吊り上げ屋」ボラスの存在。
となると、27歳の菊池をゴンザレスに次ぐ先発2番手と想定する案は、かなり現実味を帯びてくる。5~6年の長期契約を結ぶなら、チームの再建計画ともサイクルが合致する。菊池自身も、優勝争いに加わっていきなりテンションを高めるよりも、最初の1~2年はアメリカ野球にじっくり馴染めるような環境が望ましいのではないか。
ただ問題は、「吊り上げ屋」の異名を持つ代理人ボラスの存在だ。彼が法外な金額を吹っかければ、マリナーズ側は躊躇せざるを得なくなる。となると、金満球団のドジャース、ジャイアンツ、ヤンキースの存在が浮上するが、有力と目されていたヤンキースはJ・A・ハップとの再契約に漕ぎ着け、強力な左腕を2枚(ジェームズ・パクストンとハップ)そろえることに成功した。つまり、無理をしてまで菊池を取りにくることはなさそうだ。
クレイトン・カーショーや柳賢振と再契約を結んだドジャースも、先発の左腕投手はすでに十分だろう。むしろ、エースのマディソン・バムガーナー以外にもう1枚左腕が欲しいジャイアンツの存在が浮上してくるのではないか。再建中のパドレスも選択肢のひとつだが、資金面に問題がある。
再建中のチームならのびのび。
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と見てくると、菊池のマリナーズ行きという線は意外に面白いかもしれない。私はこれまでマリナーズの「チーム解体プラン」に疑義を呈しつづけてきたが、再建中のチームが意外な好成績をあげる例は皆無とはいえないのだ。
最近では、2017年のツインズ('16年は103敗を喫したのに、17年にはワイルドカードでポストシーズンに進出)や'18年のアスレティックス(3年連続負け越しで、まだまだ再建中と見られていたが、'18年はワイルドカードでポストシーズン進出)がそれに当たる。
2019年のマリナーズが、そこまで鮮烈な逆襲劇を見せるとは予想しづらいが、菊池にとっては「のびのびと投げられる」舞台が整えられるのは歓迎すべき事態だ。ま、このあたりは、ボラスの肚ひとつだろう。環境が味方をし、メンタル面が安定すれば、菊池雄星はかつての石井一久(ドジャース)に匹敵する働きを見せてくれるような気がする。