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プロ野球PRESSBACK NUMBER
「文句あるんかコラア!」超大物俳優2人が大ゲンカ、原因は? 元プロ野球選手・八名信夫が“悪役スター”になるまで「40年間、1回もラブシーンなかった」
posted2025/05/18 11:01

“名悪役”として知られる八名信夫、89歳
text by

岡野誠Makoto Okano
photograph by
NumberWeb
「まずい…もう一杯!」。ネガティブなフレーズなのに愛されたあの青汁CM。1990年から25年以上にわたり起用されたのが八名信夫(89歳)である。じつは日本ハム(当時・東映フライヤーズ)OBで、のちに俳優として「名悪役」という独自のポジションを築いた八名が、その激動半生をNumberWebに語った。【全2回の2回目】
◆◆◆
八名信夫の恩人同士が、殴り合い寸前の危機を迎えた。原因は、紛れもなく八名にあった。
「おどれ、コラア!」名優2人の大喧嘩
1968年、鶴田浩二主演の東映映画『いかさま博奕』で、若山富三郎が後ろから八名を止めるシーンがあった。八名が短刀を抜くと、若山の眼鏡に当たり、額から血が流れた。
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「役者の顔に傷つけやがって! アホんだら!!」
若山は小道具を次々と蹴り倒した。後ろで様子を見ていた鶴田が「何があったんだ」と静かに歩み寄った。若山が「こんな映画撮ってられるか!」と叫び散らすと、鶴田の表情が一変した。
「八名はワシの舎弟だ。何か文句あるんかコラア!!」
殺気立つ鶴田は若山を睨むと、ゆっくりと楽屋に歩を進めた。数分後、俊藤浩滋プロデューサーに呼ばれた八名が所長室に出向くと、驚愕の光景を目の当たりにした。
「若山さんが俊藤さんに土下座してた。でも、納得してなかったんだろうな」
俊藤が「仕事にならへんだろ」と叱ると、若山は不服そうに睨みを利かせた。腹を立てた俊藤は「おどれ、コラア!!」と一喝した。
「すげえ雰囲気だったよ。若山さんは、鶴田さんの部屋に詫びを入れに行った」
落ち着き払った鶴田が「辛抱せえ」と呟くと、若山は「わかりました」と頷いた。撮影は再開された。
「すごいよな。こんなことは話しちゃいかんけどね。まあいいだろう」
悪役の養成所に…「刑務所入ってました」
八名は、日本で初めて“悪役”にスポットライトを当てた人物と言っていい。役者デビューから24年経った83年4月には総勢16人で『悪役商会』を立ち上げ、89年には『悪役商会養成所』を開校した。