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高知商が選手に施した「洗脳」。
明徳義塾撃破を胸に、甲子園優勝へ。

posted2018/08/06 17:00

 
高知商が選手に施した「洗脳」。明徳義塾撃破を胸に、甲子園優勝へ。<Number Web> photograph by Kyodo News

山梨学院との乱打戦を制して初戦を突破! 応援席へ駆けだす高知商ナイン。

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中村計

中村計Kei Nakamura

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 この夏、高知商にとって最大の敵は「苦手意識」だった。

 大会2日目、第1試合。高知商は山梨学院との壮絶な打撃戦を制し、14-12の堂々たる勝利を挙げた。高知勢としては、明徳義塾以外では、9年振りの夏1勝でもあった。

 ひと昔前まで高知県は、高知商、高知、土佐、明徳が4強と呼ばれていた。ところが近年は、昨夏まで明徳義塾が8連覇するなど明徳1チームが突出し、それに辛うじて高知が追いすがるという状況が続いていた。高知商は11年間、甲子園から遠ざかっていた。

 上田修身監督は、3年前に就任したばかり。1980年、エース中西清起(元阪神)を擁して選抜大会で優勝したときのキャプテンでもある。

 上田監督は就任当時をこう振り返る。

「自信のなさを感じましたね。僕らの時代は明徳に負けたことはほどんどなかったので何とも思ってなかったんですけど、今の選手たちは、中学時代から明徳にやられ続けてるんでね。技術うんぬんよりも、明徳の前だと、勝手に崩れてしまうところがあった。

 昔だったら、苦しい練習を課して精神的強さを身に着けさせるところなのかもしれませんが、私は、それよりもできないことをできるようにさせてやろう、と。そうすれば自然と自信につながりますから」

「このユニフォームを着るもんの責任や」

 この夏、高知大会のヤマ場は準決勝の高知戦からだった。

 決戦の朝、上田監督は珍しく強い口調でいった。

「このユニフォームを着たら、エンジ(高知)と、縦じま(明徳)と、白(土佐)には負けたらいかんぞ。それがこのユニフォームを着るもんの責任やからな。それは俺の時代から言われ続けてきたことなんや」

 高知商の選手であることのプライドを呼び起こし、高知戦を4-0で突破する。

【次ページ】 選手達を「洗脳」するためにしたこと。

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