藤田俊哉の日欧蹴球比較論BACK NUMBER
藤田俊哉が語る代表選手の“性分”。
「重圧に見えても、それすら喜び」
text by
藤田俊哉Toshiya Fujita
photograph byGetty Images
posted2018/06/18 07:00
代表選手にしかわからない気分がある、と藤田俊哉氏は言う。彼らはどんな心境でW杯に向かうのだろう。
ガーナ戦、スイス戦は工夫がなかった。
日本代表は、国内でのガーナ戦、ルガーノでのスイス戦をともに0-2で落とした。
ガーナ戦での3バック採用は、本大会に向けた新しいオプションの準備だと考えられる。その戦術には、どんな選手がマッチするのか? 選手たちのゲームコンディションはどうなのか? 監督は実際に自分の目で見たかったのだろう。
また翌日には最終メンバー23人を決定しなければならない状況だっただけに、できるだけ多くの選手をピッチに送り出したかったはずだ。
もちろん、試合である以上は結果を求められるのは当然のこと。選手たちの話からもそのように考えていることは窺える。
だがそれ以上に、内容も乏しかったのではないか。攻撃パターンに変化は感じられず、得点も生まれない。本大会でキーポイントになるだろうセットプレーでの工夫もなかった。残された時間で入念にトレーニングするのだろうが……。
ゴール前のプレーを増やさなければ……。
FIFAランキング6位のスイス代表とのテストマッチでは、日本はこれまで慣れ親しんだ4バックを採用した。試合には敗れたが、キックオフ直後からスムーズにゲームに入って行けた。立ち上がりのプレッシャーのかけ方などから見て、こちらのシステムの方が選手たちは戦いやすいのだろう。
ただ、その後はスイスの圧力に押し戻され、個の勝負で劣勢に立たされる形となり、PKを含む2失点となった。また得点を奪うための積極的なシュートは少なかった。サイドチェンジからの仕掛けでクロスボールをゴール前に送るシーンは何度か見られたが、崩し切ってからのクロスではなかった。ドリブル、スルーパスなどでペナルティーボックスにボールを運ぶ回数も極めて少ない。
モスクワに到着した当日、私はタイミングよくオーストリア対ブラジルのテストマッチを見ることができた。
3-0で勝利したブラジルが何度もペナルティーエリアに侵入してシュートまで持ち込んでいたシーンを見て、やはりゴール前のプレーを増やさないことには、ゴールの確率も上がるはずがないと改めて感じた。ブラジル代表の戦いぶりからは、そんなシーンをたくさん見ることができサッカーの面白さも再確認できた。
オーストリアはW杯には出場しないが、FIFAランキングは26位。ブラジル代表の仕上がりの良さを垣間見ることができた試合となった。