酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
衣笠祥雄&山本浩二はONにも匹敵。
18年で4657安打のスーパーコンビ。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKyodo News
posted2018/04/26 11:30
2131試合連続出場を果たした衣笠祥雄さん。花束を渡したのは阿南準郎監督と、若かりし日の落合博満さんだった。
3つの名コンビの共通点。
衣笠祥雄と山本浩二、長嶋茂雄と王貞治、ベーブ・ルースとルー・ゲーリッグの3組のコンビにはいくつかの共通点がある。
1つは、一方だけが大卒だったこと。平安高の衣笠と法政大の山本浩二、立教大の長嶋と、早実高の王、セント・メアリー少年工業校のルースとコロンビア大のゲーリッグ。
学歴が違うということは、価値観やものの考え方が違うことにつながる。両雄はチームメイトながら「仲良しコンビ」になることなく、「ライバル」の関係を維持したのだ。
王貞治は長嶋茂雄と2人だけで食事をしたことがないと言っているが、互いに異なる世界を持ち、適度な距離を保っていたのだ。衣笠と山本もおそらくそういう関係だったのだろう。
もう1つは、一方の背番号が「3」だったこと。衣笠は「3」山本は「8」、長嶋は「3」王は「1」、ルースは「3」ゲーリッグは「4」。
そもそもMLBが正式に背番号を導入した嚆矢は1929年のヤンキースだ。当時3番を打っていたルースが「3」を、4番のゲーリッグが「4」をつけた。
そのルースが傑出した大打者になったことで、彼に続く多くの強打者が「3」をつけた。
そういう意味では、衣笠も長嶋もベーブ・ルースの末裔と言えそうだ。
もちろん、この3組の大打者は日米の殿堂入りしている。そして背番号は永久欠番になっている。
「鉄人」の愛称は背番号28から。
衣笠祥雄は「鉄人」と呼ばれた。今では、17年間続いたNPB史上1位の2215試合連続出場記録によってそう呼ばれたと思われているが、そうではなかった。
衣笠の最初の背番号が「28」だったから、当時人気だった横山光輝の漫画「鉄人28号」にあやかって「鉄人」と呼ばれたのだ。
入団時の衣笠は田中尊、久保祥次につぐ3番手捕手。レギュラーは愚か、一軍出場さえおぼつかない端っこの選手だった。
そこから這い上がり、ルースや長嶋茂雄もつけた背番号「3」にかわって、誰よりも休まず試合に出続けたのだ。当初は単なるあだ名だった「鉄人」は、衣笠祥雄そのものとなったのだ。
昭和人の「努力」を体現するような偉業を積み重ねた偉人だった。星野仙一さんと誕生日はわずか4日違い。冥福を祈りたい。