球道雑記BACK NUMBER
ロッテ好スタートと“走塁改革”。
井口監督が一、二軍全員に徹底中。
posted2018/04/12 08:00
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph by
Kyodo News
弱者が強者に勝つには走塁しかない。
ずっとそう考えていた。昨年最下位に終わった千葉ロッテのことである。
3割打者がズラリと揃った打線でも、一発攻勢で相手をねじ伏せる打線でも今のところない。四死球や相手守備のミスで作った数少ないチャンスを、ひとつでもふたつでも先に進めて、点にする。極端な話、ヒットが出なくても内野ゴロや外野フライでランナーを返す、そんな野球が千葉ロッテには求められている。そう感じていた。
だからこそ初回、無死一塁で出た走者をあっさり犠打で送る采配には、あまり共感できなかった。なぜ、相手投手の不安な立ち上がりを揺さぶりもせず、簡単に1アウトを与え助けてしまうのか……。
それこそ王者が採るべき戦法ではないのかと、もどかしい想いで戦況を見つめながら、チャンスが潰れた瞬間「ああ……」と、心の中でため息を漏らす。そんな近年だった気がする。
6年間で19盗塁の鈴木大地の走塁も……。
今季、メディアで広く取り上げられている井口ロッテの“走塁改革”。
キャンプ、オープン戦、そして開幕から9試合が経過して、おぼろげながらその形が見えたとき、ようやく「見たい野球が見られる」ように思えた。
昨年リーグ3位だった78個の盗塁を、今季はその倍、レギュラーシーズンの全試合数143と同じ分だけ走ろうと宣言した井口資仁監督の言葉に強く共感した。
4月8日現在、千葉ロッテのチーム盗塁数は11個。試合数の9より若干多い数字である。しかし、監督の言う“走塁改革”は、なにも盗塁数だけを指しているのではない。
たとえば鈴木大地である。
プロ入りから過去6年間で盗塁数19個だった彼は、チーム内でもけっして俊足の方ではない。しかし、今季の彼の走塁を見ていると、数字に表れないところで常に相手バッテリーに揺さぶりをかけているのが見て取れる。
それが顕著に出たのが、井口監督が就任初勝利をあげた3月31日の東北楽天戦のことだった。