サムライブルーの原材料BACK NUMBER
森重真人がルーティンを壊した理由。
W杯のためにも「安定より成長を」。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byYuki Suenaga
posted2018/03/13 11:30
FC東京の練習場で、森重真人は明るい表情を見せた。W杯まであと3カ月、彼は虎視眈々と狙っている。
「サッカーってこんなに疲れるんだなって」
日本代表では自分が務めてきた吉田麻也の相棒を、昌子源や槙野智章がこなしていた。しかし「悔しい」という感情は湧いてこなかった。それほど毎日が充実していたという裏返しでもあった。
「まだ歩けない、まだ走れないという状況では、代表を現実として考えられないですからね。ただ8月に、オーストラリアに勝ってワールドカップ出場を決めたのを見て“自分もそこにいたかったな”とは思いました。ワールドカップ出場を手にする雰囲気を味わいたかったなということだけはありましたけれど」
大ケガに見舞われてリハビリが長くなると、メンタルの波も大きくなってしまうのが普通だろう。焦燥が不安定を助長するもの。しかし森重はそれを小幅に抑え切った。もちろん不安がなかったわけではない。
「これ本当に治るのか、(足が)動くようになるのか、痛みが取れるのかって手術後から11月にチームに合流するまでは思いました。時間が長く感じましたよ。でもシーズンが終わって、12月中旬に自主トレに入ってからはあっという間でした」
そして彼は「そうだ。発見と言えば」と苦笑いを浮かべた。
「筋トレもバランス良くしっかりやってきて、走り込みもしっかりやってきて、それなのに久しぶりにサッカーをやってみたら、サッカーってこんなに疲れるんだなって。それが一番の発見だったかもしれません」
森重はこちらの笑いも誘った。
あとは試合しながら感覚をあわせたい。
日本代表メンバーから遠ざかっている以上、ロシアW杯が厳しい道のりであることは言うまでもない。
だが危機をしのいで今の彼がある。
「体はしっかりやり続ければ(いい状態に)持っていけると思っているので、あとは試合をしながら感覚を合わせていきたい」
プレー感覚はこれからだとはいえ、開幕のピッチで彼が大きく見えたのはきっと筆者だけではなかったはずだ。