マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
ドラフトの卓上には2つのリストが。
獲得候補と、もう1つは戦力外候補。
posted2017/11/13 07:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Kyodo News
ドラフト会議が終わって10日、各球団は指名選手への挨拶に東奔西走の毎日のようだ。
その間にも、アマチュア野球の公式戦は続いている。大学野球なら、「明治神宮野球大会」の予選にあたる各地区の出場校決定戦が行なわれ、また京セラドーム大阪では、社会人野球の秋の全国大会である「日本選手権」が始まった。
このドラフトで指名した選手ももちろん“最後のご奉公”として出場するし、来年以降の“候補選手”のプレーぶりも見ておかねばならない。
スカウトたちは、入団交渉の合間に現場にも足を運んで、忙しい日々はドラフトの後も続いている。
ドラフト会議の2日後、東北楽天から戦力外通告7選手の名前が公表された。歩調を合わせるように、各球団からも次々と戦力外が発表された。
選手リストを見て「じゃあこいつ、クビ……」。
こうした動きは毎年のことだ。
ペナントレースが終了した球団は、10月に入るとすぐ第一次の戦力外通告を発表する。そしてさらに、ドラフト会議が終わって、新戦力の大筋が見えたところで、2回目の戦力外通告が行なわれる。
ドラフトを数日後に控えたある日、ある球団のスカウトの方から、こんな話を耳にした。
「ドラフト会議っていうのは、すごいんですよ。テーブルの上に“リスト”が2種類置いてあるんです。1つは指名候補者のリスト、もう1つはウチの球団に在籍している選手のリスト。つまり“選手名鑑”みたいなものですね。指名が始まるでしょ……1位で左ピッチャーが獲れた!ってなると、選手名鑑係の編成担当が『じゃあ、こいつ、クビやな……』って、ウチの左ピッチャーの名前の上に“×”付けるんです。2位でショートが獲れた! そうすると今度は、ウチのショートが1人クビになる。それが、こっち側にとってのドラフトっていうものなんですよ」