野球のぼせもんBACK NUMBER
ソフトバンクV奪回の裏で……。
二軍が極端に低迷したのはなぜか。
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKyodo News
posted2017/09/29 08:00
ソフトバンクの二軍は、昨年より新球場「タマホームスタジアム筑後」で試合を行っている。
若手の抜擢は、ベテランが枠から外れることを意味する。
実際に2月の宮崎キャンプでは一軍実績がほとんどない若手が多く抜擢された。その中から投手では石川柊太(昨年まで一軍なし、今年8勝)や松本裕樹(昨年まで一軍1試合、今年2勝)が大きく成長。野手でも上林誠知が外野の一角に定着し、捕手の甲斐拓也も頭角を現した。工藤監督が「我慢するところは我慢する」と積極的に起用したことが彼らの飛躍をアシストしたことは間違いない。
プロ野球は“枠”の世界だ。勝ち取る者がいれば、敗れ去る者がいる。全盛期に比べて成績が下降した実績組が出番を失うのは明らかだった。
ここで腑に落ちないのが、球団は世代交代の考えを持ちながらも、なぜこれほど多くのベテラン選手たちと複数年契約を結んだのかという点だ。
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上記の中では長谷川(来季まで3年)、吉村(今季まで2年)、本多(来季まで2年)、城所(来季まで2年)、攝津(来季まで3年)がこれに相当する。
すべてを否定するつもりはない。戦力を充実させることが優勝、そして常勝への近道だ。現に今季は故障者が続出したが、ぶ厚い選手層でカバーしたことが勝因のひとつとなった。
選手側に立てば、それはチームに大きな功績を残してきたという証であり、非難をされる筋合いはない。また、彼らは数少なくとも一軍で出番があれば、結果で応えた。
長谷川は6月25日のライオンズ戦(ヤフオクドーム)でプロ11年目にして初めて4番に座ると、右翼席への特大2ランを含む3打点と活躍した。最近でも9月24日のイーグルス戦(同)で攝津が4カ月ぶりに一軍マウンドに立ち、6回まで零封(結果は7回途中2失点で勝ち負けつかず)する好投を見せた。
育成はホークスの根幹であるはずなのに……。
だが、二軍で黙々と準備をする毎日の中で、彼らのモチベーションは如何ほどだったのか。ベテラン選手は長く球界にいるぶん、場の空気を読む力も備わっている。立場は自覚していただろう。
また、ファームの首脳陣は“一軍への準備”として彼らを起用しないわけにはいかない。それを重視すれば、若手育成のための投球回数や打席数は減ることになる。
そのバランスを欠いた結果が、今年のウエスタン・リーグの戦績だったのではなかろうか。
育成はホークスの根幹だ。補強も行うが、常勝ホークスを築き上げていく核となるのが育成である。
たかが二軍のV逸と目を逸らしていると、痛いしっぺ返しが近い将来に返って来るような気がしてならない。