サムライブルーの原材料BACK NUMBER
欧州で最もゴールを決める日本人。
ハーフナーの独善的FW論が面白い。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byYuki Suenaga
posted2017/06/29 11:25
194cmという身長からポストプレーをイメージされるが、ハーフナー・マイクの本質はゴリゴリの点取り屋なのだ。
味方でもパスだと思うシーンで、反転して自ら打つ。
一方で、相手など関係ない強引な顔もある。
それが4月5日のヴィレムII戦のゴールだ。ペナルティーエリア内で相手を背にしてパスを受け、そのままターンして利き足とは逆の右足シュートでゴール右隅を射抜いた。
「もうひとり(ボックス内に)入ってきて、その味方にパスを出すもんだとみんな思っていたみたいですね。(パス)くれって、手を出してましたから。でもボックスに入ったら、自己中心でやるのがフォワード。中盤の選手はパスとかボール奪取とかあるけど、フォワードの結果は分かりやすくて、やっぱりゴールが一番なんで。俺、アシストじゃ嫌なんです。フォワードとしては1点でも多く取りたい。2ケタ取れなかった今シーズンは、自分のなかで納得できていない」
ハーフナーは思わず顔をしかめた。最低ラインの2ケタに届かなかった話を口にすれば、すぐに悔しさが襲ってくる。
個人でのシュート練習を一切しない理由。
ゴールの感覚を研ぎ澄ますために、彼は個人でのシュート練習を一切やらない。Jリーグ時代から続けていることで、全体練習だけで十分という考え方だ。
「相手がいない状況でやるのは、自分としてはあまり意味を感じない。試合の状況でどれだけ集中して、狙ったところに打てるかどうかだと、自分の場合はそう思っているんで。よく見たら、ゴールって広いじゃないですか。そこにゴールキーパーが1人立っているだけ。それを考えたうえで、むしろほかの試合のゴールシーンを見ます。どう打っているかというよりも、相手のディフェンダーやゴールキーパーはどう立っているか、シュートに対してどう防ごうとしているかを見ています」
向き合うのは自分ではなく、あくまで相手である。
技術やスピードなど己に足りない要素を求めたところで、ゴール数が伸びるわけではない。総合力より特化力。高さ、パワー、タイミングという己の特長を最大限活かしながら、駆け引きに勝つ。そしてゴールマウスにシュートを打ち込む。そこにのみ集中している。