ドイツサッカーの裏の裏……って表だ!BACK NUMBER
原口元気とゴールの微妙な距離感。
代表では量産、クラブではまだ1点。
text by
遠藤孝輔Kosuke Endo
photograph byAFLO
posted2017/03/23 12:40
EL出場圏にいる好調ヘルタでも、原口元気の役割は確固たるものだが、攻撃面での存在感が増せば、さらなるステップアップも望める。
守備は完璧だが、ゴールが遠い。
ただ、守備のタスクをほぼ完璧に遂行している一方で、攻撃面では思うような成績を収めていない。なかでも以前からの課題である得点力に関しては、改善の余地をおおいに残している。ここまでに記録しているのは第19節のインゴルシュタット戦で記録した1ゴールだけで、決定率はわずか4.3パーセント。好クロスで決定機を演出しながらゴールが生まれなかった不運(第8節のケルン戦や第17節レバークーゼン戦)にも見舞われているが、2ゴールをお膳立てした第2節からアシストの数も増えていない。
シュートを放つ選手次第になるアシストはともかく、ゴール数が伸びないのは何故か。その大きな要因は役割にある。典型的な堅守速攻を志向しているヘルタ・ベルリンで、原口はゴール以上にチャンスメークや守備での仕事を求められているのだ。
攻撃の仕上げ役を担っているのは、センターフォワードのベダド・イビセビッチと左ウイングのサロモン・カルーで、この両雄は“最低限”のディフェンスしかこなさない。全速力で自陣まで戻るような働きを見せるのは稀で、虎視眈々と攻撃のためのエネルギーを蓄えているのだ。例えば、カルーの1試合におけるスプリント回数が原口の半分ほどしかないのは偶然ではない。
その代わり、ゴール前での集中力には並々ならぬものがあり、25パーセントという高い決定率をマーク(バイエルンのロベルト・レバンドフスキが21パーセント)。ここぞという場面で違いを作り出している。
原口がスペースに侵入しても、パスが来ない。
原口のゴールが増えないもう1つの理由として、視野の広さを売りとするパサーの不足も挙げられるだろう。原口が絶妙な動き出しで敵陣のスペースを突いても、ボールが出てこない場面が少なくないのである。
中盤における守備力を高めるため、ダルダイ監督は労働者タイプの選手(ペール・シェルブレ、ニクラス・シュタルク、ファビアン・ルステンベルガー)を2ボランチに並べているが、そのうちの1人でもパスによる好機の演出が上手い司令塔なら、原口の得点機会はグッと増えているのではないか。