濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
文化系プロレスは100年後も生き残る!
映画に込めたDDTの“瞬間最大風速”。
posted2016/11/23 08:00
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
(c)2016 DDT PRO-WRESTLING
今年も両国国技館大会を成功させるなど好調なプロレス団体・DDTが、2本目の映画を作った。前作『劇場版プロレスキャノンボール2014』はバラエティ色が強かったが、今回は試合そのものに迫ったドキュメンタリーだ。
DDTの頭脳とも言えるマッスル坂井とともに共同監督を務めたのは、ドキュメンタリー監督の松江哲明。本作での彼の仕事は、坂井がプロデュースした興行、DDTの豊富な映像素材を「“映画”にすること」だったそうだ。「映画では直球しか通用しない」とも松江は言う。
タイトルは『俺たち文化系プロレスDDT』。“大社長”高木三四郎の著書と同名であり、まさに直球だ。内容も、昨年11月17日に開催された後楽園ホール大会で、HARASHIMAと大家健のタッグが新日本プロレスの棚橋弘至・小松洋平組に挑んだ試合がクライマックスになっている。
新日本のエース棚橋にDDTの雑草軍団が挑む。
ことの始まりは2015年の8月だった。DDT両国大会でHARASHIMAと棚橋のエース対決が実現。勝った棚橋が“インディー批判”とも取れる発言をしたことで物議を醸した。当然、DDTの選手にもファンにもモヤモヤは残る。とはいえ棚橋はゲスト参戦であり、新日本というメジャー団体の所属。忘れること、なかったことにするのが大人の対応ではある。
だがそこで、大人にならなかった人間がいた。そもそも両国大会のタイトルは『両国ピーターパン』だ。スーパー・ササダンゴ・マシンことマッスル坂井、男色ディーノ、大家健のユニット〈#大家帝国〉は、自分たちのプロデュース興行に棚橋の出場を要求する。相手はもちろんHARASHIMA、そして「棚橋が知らないプロレスをする男」大家のタッグだ。
強大な敵に立ち向かう弱小、もしくは雑草。『ロッキー』を例に挙げるまでもなく、古今東西のスポーツ映画で繰り返されてきた王道にして直球のフォーマットだ。映画監督である松江は、そこにDDTの闘いを重ねた。試合の映像は後楽園ホールのバルコニーや、リングサイドのセコンド越しに撮ったものを多用。いわば“観客目線”で、大会中継の映像とは違うものになっている。仲間たちを見つめる坂井の表情を追ったアップも印象的だ。