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1位通過も、内容は期待から程遠い。
フランスのEUROグループリーグ総括。
posted2016/06/23 11:30
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph by
Clive Rose/Getty Images
フランス代表が、EURO2016のグループリーグ1位通過を果たした。
予想通りの結果とはいえ、内容は期待からは程遠い。
初戦のルーマニア戦では、ディミトリ・パイエの決勝ゴールが決まったのは89分だった。コレクティブな攻撃では攻めあぐね、引き分け濃厚と思われた瞬間の個人技によるミドルシュート。ゲームメイカーにポジションを変えてからの彼の活躍と、エンゴロ・カンテの攻守に安定したパフォーマンスが光った他は見るべきものはなかったが、それでも第1戦の硬さやプレッシャーが考慮され、勝ち点3を得たことが評価された。
攻撃陣を入れ替えて臨んだアルバニア戦も、キングスレー・コマン、アントニー・マルシャルの両若手が突破力を発揮できず、得点は交代出場となったアントワン・グリエスマンが90分にようやく決めるまで待たねばならなかった。パイエの追加点は96分。これもまた、結果オーライである。さらに攻撃陣を再び入れ替えたスイス戦は無得点の引き分け。
ヨアン・カバイエ、ムサ・シッソコが今後のスタメン候補に名乗りをあげ、ポール・ポグバが前半だけとはいえ復調の兆しを見せたものの、どれも決定打となるような活躍ではなかった。
チームとしての実績はないが、爆発の予感があった。
選択肢が増えたのはディディエ・デシャン監督には喜ばしいが、同時に悩みもまた増えたのだった。ポグバは中盤の左でプレーした方が明らかに良く、ブレイズ・マテュイディとポジションが重なる。このふたりとシッソコの誰を選びどう配置するかが、新たな問題になったからだ。
開催国であり、優勝候補の一番手としてフランスは大会に臨んだが、高い評価は期待値がコミでありチームとしての実績があるわけではなかった。
グリエスマンやポグバら個々の選手のクラブでの活躍とコマン、マルシャルといった若い力の台頭、そしてデシャン監督の統率力。それらがうまく噛み合ったときに、ポジティブな化学反応を起こして途方もない力を発揮するのではないか。爆発を予感させる雰囲気がチームには漂っていた。
カリム・ベンゼマとマテュー・バルビュエナを外し、2010年南アフリカワールドカップ以降チームにつきまとっていたスキャンダルの根源を断ち切ったのも、下世話な話にいい加減倦んでいた人々にいい印象を与えた。