セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
イタリアの伝統は「弱者で勝者」。
“ティキタカ”を捨てて挑むEURO。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2016/06/05 08:00
チームのフォトセッションにスーツで登場したブッフォン(右)とシリグ。GKこそが“カテナッチョ”のまさに中心だ。
FIFAランク2位のベルギーから届いた挑戦状。
そして今大会、アズーリには挑戦状が届いてもいる。
送り主は、大会初戦の相手ベルギーの指揮官ビルモッツだ。
「リヨンでの大会初戦が鍵だ。うちかイタリア、敗れた方が一気にグループ敗退のリスクを抱えることになる」
出場国で最も高いFIFAランク2位を誇るベルギーのビルモッツは、“黄金世代”と呼ばれるトッププレーヤーを揃え、ベスト4以上を狙う。
「うちとポルトガル、そしてイタリアが(優勝への)セカンドグループだろう。2年前のブラジルW杯で、まだ若かったベルギー代表はさまざまなことを学んだ。EUROの方がW杯より難しい大会だということは承知しているし、イタリアとの試合が戦術的な試合になることも覚悟している。ただし、ベルギーはもう(国際大会の)右も左もわからない甘ちゃんチームじゃない」
応えるのは、アズーリ史上最多出場試合数を更新し続ける主将ブッフォンだ。
「イタリアへの下馬評が低いことは感じているし、おそらくそれは正しい評価なんだとも思う。だが、大会本番ではそれをバネにして、根性を見せることが大事だ。ライバル国がイタリアを過小評価してくれる方が、その分サプライズも起こしやすくなるというものさ」
つねに弱者の戦いを追求し、勝利してきた。
4年前に準優勝したときも、アズーリに対する大会前の評価は決して高くなかった。
イタリアは、サッカー史の勝者ではあるが、強者であったことはない。つねに弱者の戦い方を追求してきたからこそ、タイトルに手をかけてきた結果至上主義なのだ。
“カテナッチョ”とは、アズーリの精神である。
DFたちが守る細かな位置取りのステップのことでもあり、自らの持ち場所は相手のユニフォームを破いてでも通さないという責任感の発露でもある。
「カテナッチョ」の言葉を口にするとき、イタリアの男たちは目の色を変える。ベルギーもアイルランドもスウェーデンも、あらためてその真実を知るはずだ。