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スタートよし、コーナーよし、直線よし。
藤田菜七子が初騎乗で技術を証明。 

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島田明宏

島田明宏Akihiro Shimada

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photograph byMasashi Adachi

posted2016/03/04 11:30

スタートよし、コーナーよし、直線よし。藤田菜七子が初騎乗で技術を証明。<Number Web> photograph by Masashi Adachi

6回の騎乗で4度掲示板につっこんだ藤田菜七子。多くの人が彼女の騎手としての技術を見直したに違いない。

4着、2着、5着、13着、3着と上々の成績。

 2戦目はダート1500mの第4レース、騎乗馬は9歳牝馬のシンフォニーヒルズ。道中は縦長の馬群の後方を進み、4コーナーで外から追い上げた。直線で左ステッキを入れながら手綱を持ち替え、ハミをあて直して馬を反応させ、小差の4着に追い込んだ。

「届かなかったですが、上位に持ってくることができて、自信になりました」

 同じ距離で行なわれた、つづく第5レースも似たような展開になった。後方待機から、3、4コーナーで外から進出。直線、今度は左ステッキを連打して騎乗馬のミスターナインワン(牡7歳)を叱咤し、頭差の2着に追い込んだ。叩き合いで3着に競り落としたのは、通算6800勝以上を挙げている的場文男だった。「おれもあの馬に6回乗ったからわかるんだけどズブい馬で、それを動かしたんだから上手い。あの子は7000勝するよ」と的場。多少のリップサービス込みとはいえ、南関東のレジェンドにここまで言わせたのだから、たいしたものだ。

 4戦目、ダート1400mの第8レースも、後方から追い込んで5着。

 5戦目、ダート1600mの第10レースでは、自厩舎(美浦・根本康広厩舎)のレガリアシチーに騎乗するも、ブービーの13着に敗れた。

 そして6戦目、ダート1500mで行われた最終の第12レース。4歳牡馬のポッドライジングに騎乗した藤田は、それまでの5戦とは一転して先行し、道中は2番手につける積極策に出た。3コーナーで外から2頭にかぶせられ、一度は前に出られたが、そこで引かずに馬の間を豪快に伸び、先頭で直線に入った。果敢な姿勢に、スタンドから拍手が沸き起こった。最後は力尽きて4馬身差の3着に敗れたが、秘めていた「強さ」を見せた一戦となった。

若手の3キロ減量があれば勝っていた?

 6戦を終え、師匠で、騎手時代ダービーを制した根本康広調教師はこう話した。

「川崎は1、2コーナーがキツいのに、最初のレースですんなりクリアするのを見て、センスがあるな、と思いました。こちらの騎手のほか、裁決委員も『コース取りがいいし綺麗に乗る』と褒めてくれました。もし3キロの減量があれば、4着だった第4レースも、2着だった第5レースも勝っていたと思います」

 デビューしてから5年未満で、通算100勝以下の若手騎手には、ベテランより軽い斤量で乗ることのできる減量の特典が与えられる。新人の場合は3キロの減量となる。斤量が1キロ違うと、ゴールでは1馬身の差になると言われているくらいだから、これは大きい。

 ところが今回の藤田には、規程により減量の特典が与えられなかった。ベテランとイーブンの条件だったにもかかわらず、6戦して8-4-2-5-13-3着という成績をおさめたのだから評価されていい。

【次ページ】 直線で伸びるのは、道中の当たりがいいから。

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藤田菜七子

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