沸騰! 日本サラブ列島BACK NUMBER
スタートよし、コーナーよし、直線よし。
藤田菜七子が初騎乗で技術を証明。
posted2016/03/04 11:30
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Masashi Adachi
ひな祭りの川崎競馬場が、爽やかな「菜七子祭り」に沸いた。
3月3日、JRAでは16年ぶり7人目の女性騎手となる藤田菜七子(18)が、中央デビューを前に、地方の川崎競馬場で初騎乗を果たした。
そのルックスも相まって、注目度の高さは異様なほどだった。この日集まった報道陣は63社の137名、テレビカメラが31台。川崎競馬場の担当者が「初めてのこと」と驚くフィーバーぶりだった。
そんななか、藤田に用意された騎乗馬は6頭。「注目されすぎてかわいそう」「デビューの日に6頭は体力的にキツい」「小回りの川崎で馬を御し切れるか」など、心配する声が多く聞かれた。ところが、フタをあけてびっくり。そうしたことを気にする必要のないレベルの騎乗で、ベテランや外国人を相手に堂々と「勝負」していた。
午前11時3分、藤田菜七子がジョッキールームから出てきた。パドックの報道エリアのシャッター音が高まり、複数のリポーターがマイクに向かってしゃべり出した。川崎競馬場全体の空気が、大げさではなく、確かに動いた。
第1レースから菜七子人気で2番人気に。
初陣となる第1レースはダート1400m。騎乗する3歳牝馬のコンバットダイヤは過去3走7、9、4着という成績だが、単勝5.6倍の2番人気に支持された。明らかに「菜七子人気」による売れ方だ。
コンバットダイヤがつけているメンコには「菜七子」の文字が。管理する浦和の工藤信輔調教師からのプレゼントだ。そんなところにも歓迎ムードが表れていた。
ゲート内で暴れて競走除外になった馬がいたため、2度目のファンファーレのあとに発走するという、異例のデビュー戦になった。
藤田のコンバットダイヤは、ポンと速いスタートを切った。が、ゲートを出てすぐ内に切れ込もうとするのを手綱で2度修正するうちに位置取りが後ろになり、そのまま伸びることなく8着に終わった。
「ゲートに入ったときは『いよいよだな』と思いましたが、2度目のファンファーレのあとはまったく緊張しませんでした。自分が思っていた位置をとることができず、後方になってしまいました」