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神野不在でも完勝で強さを証明。
出雲駅伝で青山学院がまず一冠。 

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金哲彦

金哲彦Tetsuhiko Kin

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photograph byShunsuke Mizukami

posted2015/10/20 10:20

神野不在でも完勝で強さを証明。出雲駅伝で青山学院がまず一冠。<Number Web> photograph by Shunsuke Mizukami

青山学院は、2位の山梨学院と38秒の差をつけ、2時間9分5秒でゴール。今年は大学駅伝三冠を狙う。

東洋を襲った悲劇、駒澤も3区で脱落。

 東洋は1区の高橋尚弥が無難にタスキをつなげば、2区、3区の前半に起用された学生長距離界をリードする服部勇馬、弾馬兄弟が大きくリードを奪う作戦だったに違いない。

 しかし、ハイペースで進んだ1区の途中で勢い余ってペースをあげてしまった高橋がその後大失速。最後は、大学駅伝では滅多に見られない悲惨な光景となった。

 タスキを渡す中継所の直前で、コースを外れてしまったのだ。

 出雲の1区8キロは、箱根駅伝の選手にとっては短い距離である。しかし、自分を見失ってしまうと失速してしまう怖さがある。

 秒差で争う出雲では、1回の失敗がレースそのものの勝敗を決めてしまう。

 高橋にしてみれば、コース誘導員もいて、すぐ目の前に見えていたはずの2区の選手さえも視界から消えるくらい、頭の中がパニックになってしまったのだろう。

 一方の駒澤は、1区の中谷圭佑が区間賞をとり、四天王のひとり小椋裕介(青山学院)に15秒リード。順調な滑りだしだった。

 しかし予想通り、3区の久保田和真(青山学院)に抜かれて形勢は逆転、6区の一色恭志(青山学院)にタスキが渡った時点で勝負はついていた。

 東洋にしろ駒澤にしろ、アンカー6区に一色を起用した青山学院に勝つには、そこまででかなりのリードを奪わなければ勝ち目はなかったのだ。

青山学院が、大学駅伝三冠に向かって順調な一歩。

 出雲駅伝で総合2位に入ったのは、復活の兆しが見えてきた山梨学院大学。

 都大路の高校駅伝で優勝した付属高校卒のメンバーがしっかり育ち、新生山梨学院の印象を与えた。

 最終6区、ケニアからの留学生ニャイロがタスキを受け取った後、大学名を正面に向けることに手間取って最初の数百メートルにわたって失速した。

 きっと、“タスキがけ”は大学名が正面から見えるようにするのがルールなのだと教わっていたのだろう。そのハプニングがなければ、青山学院にあと10秒くらいまで迫っていた可能性がある。

 次の走者にタスキを渡したあとぶっ倒れるくらいまで追い込む学生たち。

 ハラハラドキドキするドラマやハプニング。

 そして、大逆転やごぼう抜きで魅せるエースたち。

 前回は台風で中止となり、2年分の思いをぶつけたいと言った選手たちの走りはまさにその言葉どおり。駅伝の魅力と醍醐味がすべて凝縮された素晴らしいレースとなった。

 いずれにせよ、原晋監督も選手たちも再三公言してきた“大学駅伝三冠”に向けて、青山学院が順調に駒を進めた。
 

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