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FC東京-武藤嘉紀=シュート欠乏症!?
もう、困ったときの“よっち”はいない。
posted2015/07/13 11:20
text by
松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
photograph by
J.LEAGUE PHOTOS
もう、困った時の“よっち”はいない。
今季、絶対的なエースとしてチーム最多の10ゴールを挙げ、ファーストステージ2位フィニッシュの立役者となった「よっち」こと武藤嘉紀は、ドイツへと旅立った。果たしてFC東京は、武藤抜きのセカンドステージで、どんな戦いを見せるのか。
「FC東京-武藤=シュート欠乏症」
残念ながらこれが、川崎Fとのセカンドステージ開幕戦で突きつけられた現実だ。FC東京のファーストステージでの1試合平均シュート数は、10.5本。ところが、この試合でのシュート数は6本。しかも、流れの中からはわずか2本しか打てなかった。
「我々には前田(遼一)のシュートやCK、セットプレーなどのチャンスがあった。ただ、そこでフィニッシュの精度が足りなかった」
これは、試合後のマッシモ・フィッカデンティ監督の言葉だが、これが本音のはずはない。なぜなら「チャンス」と呼べるものは、13分に相手のパスミスを拾った前田が放った左足シュートと、57分にCKから森重真人が打ったヘディングシュートだけ。しかも、どちらもゴールの枠内にすら飛んでいない。
「よっちがいなくなったら」とは言われたくない。
むしろこの試合の真実を言い当てているのは、太田宏介の言葉だろう。
「正直、今日は何もできなかった。90分を通して、精神的にも肉体的にもしんどかった。課題は、チームとして攻撃の形を何ひとつ見せられなかったこと。あまりにも何もできなかったので、その原因が何なのか、今はまだ試合が終わったばかりで整理がつかない。『よっちがいなくなったから』と言われるのは個人的に嫌だし、自分が東京を引っ張るつもりでやりたい」
武藤がいなくなったから戦術を変えるのか、武藤がいなくなっても戦術を貫くのか――。フィッカデンティ監督がこの試合で選んだのは前者だ。ファーストステージまでのFC東京は、全体のラインを下げ、自陣を固めて失点のリスクを減らしつつカウンターから得点を狙うのが戦術の柱だった。この戦い方の場合、必然的にボールの奪いどころは後方になるが、武藤が巧みに相手サイドバックの背後に走り込んでパスを引き出し、突破力を生かしてボールを運ぶことでチャンスをつくり出していた。