サムライブルーの原材料BACK NUMBER
W杯のショックを引きずった青山敏弘。
「ようやく踏み出せそうな気がする」
posted2015/03/13 10:40
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Atsushi Hashimoto
時の流れは速い。
40歳を過ぎたから思うこと? いやいや周りの若い人に聞いても同じことを言う。こと、日本サッカーを取り巻く環境がめまぐるしく変わってきたから、なおさら感じることなのかもしれないが。
時計の針を少し前に巻き戻してみても、ブラジルW杯は惨敗に近い形でグループリーグ敗退に終わり、その後にハビエル・アギーレ監督が就任。武藤嘉紀らの新戦力、4-3-3、コンプロミソ(責任、義務)……とザックジャパンとはまた違った要素で活気づいてきた最中、アジアカップでまさかの8強止まりに終わり、八百長疑惑の騒動からアギーレ監督が契約解除された。そして新監督としてバヒド・ハリルホジッチ氏の就任が決まっている。
これらは、わずか9カ月間に起こった日本代表の出来事である。
選手たちもその流れに乗って、新たなチャレンジに入った。特にブラジルW杯を経験した者たちには、気持ちを切り替えて悔しさをバネにしようとする姿勢がうかがえる。前に進もう、前に進んでいかなきゃ。全体の速い流れに沿い、彼らは次のステージへと向かっていった。ただ一人を、除いては――。
ただ一人、ブラジルW杯を引きずっていた男。
ブラジルW杯の悔しさから抜け出せないでいた。昨年11月、サンフレッチェ広島のクラブハウスで青山敏弘に会った際、彼はまだ「あのとき」に足をとどめていた。
2014年6月24日、灼熱のクイアバ。
1分け1敗という後のない状況で迎えたシード国コロンビアとの一戦。先の2試合で出番のなかった青山は先発のピッチに立っていた。大会中、モチベーションを落とすことなくチャンスが来るのを信じて、心身ともにコンディションを整えてきた背番号「14」に、ザッケローニは最後の希望を託したのだ。
前半を1-1で折り返したものの、後半にエースのハメス・ロドリゲスが投入されると一気にコロンビアのペースとなっていく。青山はゴール前に侵入してきた彼を食い止められず、パスをジャクソン・マルティネスに通されて勝ち越し点を許すきっかけをつくってしまう。