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W杯のショックを引きずった青山敏弘。
「ようやく踏み出せそうな気がする」 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byAtsushi Hashimoto

posted2015/03/13 10:40

W杯のショックを引きずった青山敏弘。「ようやく踏み出せそうな気がする」<Number Web> photograph by Atsushi Hashimoto

ブラジルW杯では細貝萌らを押しのけて代表に選出された。2015年Jリーグ開幕戦のアシストには、ゴールを決めた佐藤寿人も「半分はトシのゴール」と称える。

心の整理がつかず、映像を見られなかった。

 青山はそのシーンを悔いていた。

「今でもあそこは何で行けなかったのか、何で下がったのかと……。もう1個前でボールを獲らなきゃいけなかった」

 W杯メンバーとしての責任感、そして期待して自分をチョイスしてくれたザッケローニへの恩返し。W杯を「戦いの場」と表現し、ストイックに己を高めてきた自分のすべてを出し切るつもりでいた。しかし――。

「やってやろうという思いだけが先走ってしまった。もっとしっかりポゼッションしながら裏を狙わないといけなかった。自分自身がしっかりコントロールをしながらゲームを進められていれば……。世界レベルの場でまだまだ力が足りなかった」

 気持ちが空回りしたまま、交代でピッチを去るほかなかった。

 ずっと心の整理がつかず、コロンビア戦の映像をしばらく見ることができなかった。「最近になって、ようやく見たんです」と明かしたあとで、彼は言葉を続けた。

「悔しさしか湧かない。自分のなかで整理できていないのは確かだし、新しい監督が来てみんな次の一歩を踏み出しているのに、(自分は)置いてきぼりになっているような感じもする。だから早く、きちんとブラジルの思いを自分のなかに取り込んで、次に進まなきゃいけないんだと思う。ようやく踏み出せそうな気がするし、この先に活かすしかないですよね」

 人一倍責任感が強く、武骨な男はそう自分に言い聞かせるようにポツリ、ポツリと語っていたのが印象に残った。

広島でも不本意なシーズンを過ごしたが……。

 悔しさが心を駆け回り、自分を責め、立ち止まらせる。冷静に振り返ろうにも、それができないでいた。前へ進もうにも進めない。重い口調の端々に、苦しみと戦ってきた痕跡を感じ取ることができた。

 2014年シーズン、2連覇中だったサンフレッチェ広島は8位に終わり、無冠に終わった。腰痛で復帰まで約1カ月間要した青山にとっても、不本意なシーズンとなってしまった。キャプテンとして責任を強く感じていた。

 だが苦しんだ分だけ、人は逞しくもなれる。これまでも大ケガに見舞われようが、挫折があろうが、青山という男は不屈の魂ではい上がってきた。

【次ページ】 2015年J第1号のゴールを生んだロングパス。

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