欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
藤田俊哉、オランダで監督を目指す。
日本との大きな差はキックの質とGK?
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph byKyodo News
posted2015/03/12 10:35
藤田俊哉が所属するVVVフェンロは、本田圭佑や吉田麻也、大津祐樹など多くの日本人選手が所属したクラブでもある。
「レベルが低くなると、関与していない選手が目立つ」
「注目しているのは、選手の駆け引き。オフザボールの選手と、そのマークに付いた選手を見ていて、どのタイミングで、またどの選手が動き出すかというのを自分も予測しながらね。あとはセオリー通りの動きをするのか、イレギュラーな動きを入れてくるのか。そのあたりは、レベルの高い試合では特にチェックしている。
欧州のハイレベルな試合は、少なくとも肝心な場面では、ピッチのどこにボールがあっても全員がしっかり試合に関与している印象が強い。みんな自分のポジションの役割に対する理解度が高い。本当にサッカーをよく知っている。
でもレベルが低くなればなるほど、関与していない選手がすごく目立つ。例えば遠い位置にいる選手が少しでも動けば一気に形勢が変わるような場面でも、全然関与しないとか。正直、VVVがいるオランダ2部のレベルでは、まだそういうところは見て取れる。逆にCLに出てくるようなチームにはそれが少ない」
「トシヤならこの位置に誰を起用する?」
藤田は現在基本的には、VVVのトップチームのコーチを務めている。ただ、空いた時間でその他のカテゴリーのチームや選手たちにも積極的に指導している。サッカー漬けの毎日。欧州で望んでいた生活だ。
「この間はU-19チームに関わったし、あとはいつもヤングチーム(U-23)の試合には帯同している。Jリーグに以前あった、サテライトリーグみたいなモノ。大体月曜日にそのヤングチームの試合が行なわれることが多くて、金、土曜日がトップチームの試合。日曜日はドイツに試合を視察に行ったり、さらに週中の火、水曜日はチームの練習後にCLなどカップ戦のナイトゲームを観戦しに行ったり。だから毎日の練習以外でも、常にサッカーに触れられる環境がある。
トップチームのコーチの仕事も、2シーズン目になって確実にやることは多くなってきた。最初の半年はトップチームの動きに付いていくだけだったけど、徐々に周囲から意見を求められるようになったり、試合に帯同しない選手の練習を自分が中心になって指導することになったり。
今では、監督も意見を要求してくる。例えばメンバーを決める時に、監督から『トシヤならこの位置に誰を起用する?』みたいに振られることも頻繁にあって。そこでは、ただ意見や提案をするだけではなくて、その理由もきっちり説明しないといけない。だから、いつもその場は緊張するんだよね。わかりやすく言えば、そこで自分の考えをプレゼンテーションするような感じ。
もちろん試合に関わることなので、下手なことは言えない。自分の意見に理由付けができないことも許されない。やっぱり対戦相手に関する知識や過去の情報とかは、オランダ人同士だから周りの人間の方がよく知っている。その分若い選手を推薦したり、自分のチームの選手のコンディションをしっかり把握したり、そこで僕の選手を見る眼力が問われてくる。
実は以前VVVにすごく能力の高いGKがいて、将来的にも楽しみな逸材だった。その選手を、日本のあるクラブに紹介したこともありました。結局、移籍話は縁がなくて立ち消えになってしまったんだけど、彼はこの冬PSVに移籍していった。チームではセカンドGKだったけど、トップレベルのクラブもしっかり将来性を見抜いてリストアップしていたみたいで。そういった事実一つとっても、自分の眼力に自信を持つきっかけになる」