競馬PRESSBACK NUMBER
激しくその生涯を駆け抜けた馬。
ステイゴールドはなぜ愛されたのか?
posted2015/02/13 11:30
text by
村本浩平Kohei Muramoto
photograph by
Seiji Sakaguchi
2月5日、大動脈破裂で21歳の生涯を終えたステイゴールド。その馬名の由来の一つはスティーヴィー・ワンダーが作詞と歌を担当した『Stay Gold』である。
メロディアスで、どこか寂しげにも聞こえる『Stay Gold』は、京都競馬場で行なわれたステイゴールドの引退式でも流れ、関係者や詰めかけたファンを感傷的な気持ちへと誘った。
しかし、現役時のステイゴールドはその曲のイメージとはかけ離れており、むしろ同名異曲である、日本を代表するメロコア(メロディック・ハードコア)バンドHi-STANDARDの代表曲、『Stay Gold』のように激しく、そして疾走感と爆発力に溢れた馬だった。
小柄な馬体と、気性の激しさでアウトロー街道を進む。
ADVERTISEMENT
ステイゴールドの特徴といえば、430kg台で競馬をしていた小柄な馬体と、気性の激しさ。デビュー3戦目ではコーナーを曲がらずに競走中止。7歳時の京都大賞典では斜行して、その煽りをうけたナリタトップロード騎乗の渡辺薫彦が落馬。1着に入線しながら失格となったこともある。
ただ、競馬界に久しぶりに現れた個性派をファンは支持する。アウトローな雰囲気こそ漂わせていたステイゴールドだが、生まれは旧社台ファーム(現在の社台グループ)の創業地である白老ファーム。しかも牝系にはノーザンテースト、ディクタスと、社台スタリオンステーションで繋養されてきた種牡馬の名前が並び、しかも父はトップサイアーのサンデーサイレンス。アウトローどころか、血統背景はまさに名家のお坊ちゃまだった。
そんな自分の家柄に嫌気が差したわけでは無いのだろうが、良血馬としての期待を裏切るように、ステイゴールドは日の当たる舞台での活躍を嫌っていく。4歳時にはGI天皇賞・春、GI宝塚記念、GI天皇賞・秋といずれも2着。次の年の天皇賞・秋でも2着となり、いつしかファンはステイゴールドを「シルバーコレクター」と呼び、そして愛着を持つようになっていく。