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J2北九州の“悲劇”から考える。
「FFP」って何のための制度なの?
text by
並木裕太Yuta Namiki
photograph byAFLO
posted2015/01/02 10:50
交代人数の増加案など、制度改革に積極的に取り組むミシェル・プラティニUEFA会長。ファイナンシャル・フェアプレー制度も徐々に効果を発揮しつつある。
キーワードは「身の丈にあった補強」。
例外はブンデスリーガとリーグアンでした。
リーグアンは、経営状況が思わしくないクラブに対して選手獲得の禁止や所属選手数の制限、降格、除名などのペナルティを科し、クラブライセンス制度の元祖であるブンデスでは、複数のオーナーが共同でクラブを保有する(一個人が49%以上を持ってはいけない)など、安定経営のための条件を設けていました。
独自の経営管理ルールをすでに備えていた両リーグは、育成システムの構築にも成功して強豪クラブを輩出していきます。このように経営の安定した両リーグが躍進を果たしたことも、UEFAのFFP導入を後押ししたのでしょう。
プラティニの言葉にもあるように、FFPのキーワードは「身の丈に合った補強」です。
FFPの概要をまとめると、以下のようになります。
・単年度あたり500万ユーロまでは赤字を許容する。
・オーナーが新たな資本注入を行なった場合は、4500万ユーロまでの赤字は許容する(2015-'16~2017-'18の3シーズンは許容額を3000万ユーロに減じる)。
・ユース世代の育成とスタジアム建設にかかる経費は、総コストから除くことができる(将来への投資と判断されるため)。
・科せられるペナルティは、「注意」「罰金」「勝ち点の没収」「UEFA主催の試合で得る売上の没収」「新たな選手登録不可」「選手登録人数の制限」「開催中の大会からの失格」「未来の大会への参加不可」「これまで得たタイトルの没収」と多岐にわたる。
ようやくとまった“負のスパイラル”。
実際、今シーズンは9つのクラブがFFPのペナルティ対象となりました。主なクラブは、パリSGやマンチェスター・Cなどです。
しかし、FFP導入から3年間が経ち、その効果が次第に現れてきています。この間、選手年俸と移籍金の合計は6.5%上昇したのに対し、収入の増加は6.9%。欧州に長らく蔓延していた負のスパイラルが止まり、補強中毒からの脱却が進み始めていると評価できるのです。
こうしたFFPの考え方は、Jリーグのクラブライセンス制度にも適用されています。しかし、欧州リーグとJリーグの経営環境は大きく異なっているのも事実。Jリーグでの同制度の運用に見直すべき点はないのか。そしてギラヴァンツ北九州のような悲劇を防ぐことはできないのか。それらの点については、後編で考察してみたいと思います。
(構成:日比野恭三)